汎用オペアンプ LM358 を動かしてみて、いろいろとわかったことをクックブック的に記録しておこうと思います。まだまだ完全に理解できているわけではないし間違っているところもあると思いますが、回路作成の備忘録にできればいいな、と。
今回は、汎用オペアンプ LM358 を単電源で駆動したボルテージフォロワについてです。
いわゆる「ボルテージフォロワ」は非反転増幅回路の一種で、増幅率が 1 になっているものです。”unity gain follower” とか “voltage buffer” とかとも言われます。
ボルテージフォロワ
回路
図 1 が、今回試してみるボルテージフォロワです。
ボリューム RV1 の出力電圧がそのまま負荷抵抗 R1=3.3KΩ に出力されるという簡単な回路です。出力電圧を 3.5V とすると、出力電流は 1.1mA です。
オペアンプの特性から、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低くなるので、電圧バッファとして利用されます。
図 2 は空き回路の処理と電源端子を示しています。LM358 は 2 回路入りなので、使わない回路には電源電圧の半分の電圧 (2.5V) を入力し、ここもボルテージフォロワにしておきます。
電源は +5V 単電源です。電源端子には、ノイズを除去するためのバイパスコンデンサ 0.1μF を入れておきましょう。
入力電圧 – 出力電圧 特性
図 3 は、図 1 の回路で測定した入力電圧 Vin – 出力電圧 Vout の特性グラフです。
ボルテージフォロワは増幅率 1 の非反転増幅回路ですから、Vin がそのまま Vout として出力されます。が、オフセットがあるので差異があるし、入力が 0V でも出力が出たりします。
また、Vout は電源電圧 Vcc より低い電圧で飽和します。測定では、Vcc=5.24V で飽和電圧 3.72V でしたので、最大の出力電圧は Vcc-1.52V となります。
出力電流 – 出力電圧 特性
以前から、LM358 の出力電流は 10mA 以内にしたほうがよいと書いていますが、確認のために出力電流 Isrc – 出力電圧 Vout の特性を測定してみました。図 1 の回路で Vin=3.5V とし、負荷抵抗 R1 を変更して測定した結果が図 4 です。
Isrc=7mA あたりを超えると Vout が低下しはじめ、R1=100Ω で Vout =2.74V でした。ソース電流 Isrc で 27.4mA となります。
なお、単電源ですのでシンク電流にはできません。
LM358 のデータシートでも、出力電流 25mA 時の電圧降下は 2.3V ほどになっていますので、だいたいこんな感じですね。30mA を超えると急激に低下するようなので、ここらあたりが限界じゃないかと思います。
ボルテージフォロワでマブチモータを回してみた
図 4 でもわかるように、オペアンプ LM358 の最大出力電圧が下がらないようにするために出力電流は 10mA 以内に抑えておく必要があります。なので、オペアンプから直接大きな電流を取り出すことはできません。
が、オペアンプの出力にエミッタフォロワの電流ブースト回路をつけることで、大きな電流の負荷を制御することができます。電流の大きな負荷、で思いついたのがモータですね。オペアンプの出力でブラシ付モータ (マブチモータ) を回してみましょう。
電流ブースト型ボルテージフォロワ
回してみるブラシ付モータは秋月電子通商で購入した FR-130RA-2270、マブチモータの類似品のようです。電圧 3.0V で最大負荷電流は 1.24A、ストール電流 3.6A です。
図 5 が、今回作ってみた電流ブースト型ボルテージフォロワ回路です。
2SC4511 は最大定格 80V 6A です。電流増幅率を 50 (O ランク) とすると、コレクタ電流 3.6A でベース電流は 72mA です。オペアンプ LM358 で直接駆動できませんから、ダーリントン接続にしました。
2SC1815 の電流増幅率を 200 (GR ランク) とするとダーリントンの電流増幅率は 50×200=10000、その 1/10 としてもベース電流は 3.6mA なので、オペアンプから十分駆動できます。
なお、ダーリントン接続なので全体のベースエミッタ間電圧は 1.4V ですから、オペアンプの出力電圧を最大 3.5V とするとモータ電圧は最大 2.1V までしか上げられません。
R3 は、モータ電流を検出するためのシャント抵抗です。電圧が 0.1V ならば電流は 1A ということになります。3.6A 流れたときの消費電力は 1.3W ですので、部品箱にあった 2W 型を使いました。
図 6 は図 2 と同じです。
オペアンプの空き回路はボルテージフォロワとして、電源電圧の半分を印加しておきます。電源電圧は +5V 単電源、電源端子にはバイパスコンデンサを付けます。
電源回路
図 7 は電源回路です。
ブラシ付モータの電源は十分な電流容量が必要です。が、いつも使っている三端子レギュレータ 7805 は最大電流 1.5A で足りませんので、これも電流ブーストします。
負荷電流 1.24A のとき、R6 に 0.3A 流すとすると 2SA1725 (80V 6A) のコレクタ電流は 0.94A。データシートによれば、ベースエミッタ間電圧 0.99V のときコレクタ電流は 3.5A 流せますので、十分でしょう。
R6 の消費電力は 0.3W です。これも部品箱にあった 2W 型を使いました。
下の 7805 (U3) は、オペアンプ用の電源です。モータ電源にはかなりノイズがのりますから、別回路にするのが吉です。
各部の電圧
図 8 は、電流ブースト型ボルテージフォロワでブラシ付モータを無負荷で駆動したときの、回路各部の電圧測定値です。
ボリューム RV1 の出力電圧が 1.52V ならば、ブラシ付モータにかかる電圧も 1.52V になります。このときダーリントン回路のベースエミッタ間電圧は 1.33V で、オペアンプの出力電圧は 2.85V でした。
オペアンプの出力電圧は 3.5V で飽和しますので、モータに印加できる最大電圧は 2.1V ほどです。
シャント抵抗 R3 の電圧は無負荷時 0.02V だったので、モータ電流は 0.2A です。ストール時には 3A 以上流れることもあるようです。
電流ブースト型ボルテージフォロワでは、エミッタフォロワの出力電圧を (-) 入力へフィードバックしますので、それが (+) 入力電圧と同じになるようにオペアンプの出力電圧が制御されます。
ブレッドボード
写真 1 は、実験したブレッドボードのようすです。
右上が電源部。モータ電源の 7805 と 2SA1725 には小型の放熱器をつけておきました。無負荷時でも 7805 はかなり熱くなります。負荷が大きくなると 2SA1725 のほうもかなり熱くなります。
中央手前がボルテージフォロワで、2SC4511 に放熱器をつけています。無負荷時はさほどではありませんが、負荷時はかなり熱くなります。
放熱しないとブレッドボードが溶けます。ご注意を。
後記
今回は、汎用オペアンプ LM358 を単電源で駆動したボルテージフォロワを試してみました。
電圧バッファとしてのボルテージフォロワと電流ブースト型ボルテージフォロワとは趣旨が異なるようにもみえますが、どちらも入力電圧と同じ電圧を出力する増幅率 1 の非反転増幅回路です。そして、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスは低くなります。
ボルテージフォロワが増幅率 1 の非反転増幅回路であるということは、(-) 入力を接地する抵抗が無限大だということですから、負帰還に抵抗をいれても影響はありません。むしろ、高い周波数を扱う場合には負帰還抵抗を入れないと不安定になるそうです。その場合、入力側回路のインピーダンスと負帰還抵抗は同じ値でないといけません。
ボルテージフォロワといっても、単純に出力を (-) 入力につなぐだけではないことを覚えておきたいと思います。