汎用オペアンプ LM358 でアクティブフィルタを試してみる前に、パッシブフィルタのおさらいをしています。
前回は、フィルタの周波数特性などを計算してみました。今回は、実際のローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路に信号を入力して、出力のようすを観察してみたいと思います。
ホワイトノイズとローパスフィルタ
ローパスフィルタ回路にホワイトノイズを入力し、出力を観察してみます。
ホワイトノイズ発生回路とローパスフィルタ回路
図 1 は、実験を行なったホワイトノイズ発生回路とローパスフィルタ回路です。

トランジスタ Q101 でホワイトノイズを発生しています。Q102 は増幅回路。Q103 は出力インピーダンスを下げるためのエミッタフォロワ回路です。出力されたホワイトノイズをローパスフィルタ回路 (LPF) に入力し、入力電圧 Vin と出力電圧 Vout をオシロスコープで観察しました。
ローパスフィルタのカットオフ周波数の計算値は 7234Hz ですが、入出力インピーダンスの影響を受けるので、実際の周波数は少し異なっているだろうと思います。
入出力波形
図 2 の黄色がホワイトノイズの入力波形です。細いヒゲのような波形が出ています。無負荷のとき 0V 付近の波形は直線なのですが、フィルタ回路を負荷にすると影響を受け、出力電圧のような波形になりました。
青色が出力波形です。周波数の高そうなヒゲの部分がなくなり、これだけでも高域がカットされたようすがうかがえます。
図 3 は、ホワイトノイズ入力を FFT 演算した結果です。
横軸 (周波数) の中央が 200KHz で、目盛りは 100KHz/Div です。縦軸 (ゲイン) の中央は -30dBV です。
200KHz のレベルは -30dBV ほど。高域に向かって少しレベルが下がっていますが、テキトーに作ったホワイトノイズにしては上出来、じゃないでしょーか?
ゲイン
図 4 は、ローパスフィルタの出力を FFT 演算した結果です。
低域から 150KHz あたりにかけて減衰量が大きく増加し、200KHz で -55dBV です。もうノイズレベルですね。
つまり、ローパスフィルタを通したことで 200KHz で 25dB 減衰したことになります。
図 5 は、このローパスフィルタのゲイン線図です。
カットオフ周波数は 7234KHz です。200KHz では 29dB 減衰していますので、測定結果とほぼ同じ?
うーん、FFT 演算結果の読み方がいまいちわかっていなくて自信ないのですが、そんなことでいいんですよね?
ところで、オシロスコープの FFT 演算結果は、見慣れたゲイン線図のようにはなりません。なぜ?
ゲイン線図の周波数 (横軸) は対数目盛りです。ゲイン (縦軸) も対数ですから、実質的に両対数グラフです。オシロスコープの FFT 演算の横軸は等間隔目盛り。つまり片対数グラフなので、見え方が異なってしまいます。
そこで、ゲイン線図の横軸を等間隔目盛りにしてみたのが図 6 です。FFT 演算と同じようなグラフになりました。
ちなみに、ホワイトノイズをアンプに通して聞いてみると、ゴーという低い音からシャーという高い音まで聞こえます。これをローパスフィルタに通すと、低いゴーという音と中域のザーという音が聞こえ、シャーという高い音は聞こえなくなりました。ハイカットフィルタ (ローパスフィルタ) の効果が実感できます。
正弦波とローパスフィルタ
ローパスフィルタ回路に正弦波を入力し、出力を観察してみます。
正弦波発生回路
図 7 は、実験を行なった正弦波発生回路とローパスフィルタ回路です。

正弦波発生回路はツイン T 形正弦波発振回路 (Q104) です。発振周波数の計算値は 7234Hz で、ボリューム RV1 で調整します。正弦波出力は Q104 のコレクタ側から取り出していますので、出力電圧は高いですが、波形には歪があります。Q105 は出力インピーダンスを下げるためのエミッタフォロワ回路です。
出力された正弦波をローパスフィルタ回路 (LPF) に入力し、入力電圧 Vin と出力電圧 Vout をオシロスコープで観察しました。ローパスフィルタのカットオフ周波数は 7234Hz ですが、計算値は入出力インピーダンスの影響を考慮していません。
入出力波形
図 8 の黄色が正弦波の入力波形です。ツイン T 形正弦波発振回路のコレクタ側の波形ですので歪があります。ちなみに、発振回路のトランジスタから遠い位置ほど波形はきれいになりますが、出力電圧は低くなります。
青色が出力波形です。歪の原因である高調波がローパスフィルタでカットされるので、波形がきれいになっています。また、出力の減衰量は 4.1[dB] です。
図 9 は、正弦波入力を FFT 演算した結果です。
横軸 (周波数) の中央が 20KHz で、目盛りは 10KHz/Div です。縦軸 (ゲイン) の中央は -30dBV です。
基本波 (7.14KHz) は -6dBV ですが、第 2 高調波が -28dBV、第 3 高調波が -34dBV、第 4、5 高調波も -38dBV あります。これらが波形を歪ませているようです。
ゲイン
図 10 は、ローパスフィルタの出力を FFT 演算した結果です。
第 2 高調波が -36dBV、第 3 高調波が -40dBV と減衰しています。第 4 高調波以上は -50dBV とノイズレベルに近いです。高調波が減衰したために出力波形の歪がなくなり、きれいな正弦波になりました。
基本波は 4dB 減衰しています。図 8 の入出力波形でもほぼ同じ減衰量です。
位相
図 11 は、ローパスフィルタの入出力をリサージュ図で表示した結果です。
CH1 軸上の高さが 23、全体の高さが 29 なので、sinθ = 23/29 より位相差 θ は 52° です。図 8 の入出力波形でみると、周期 139μs に対して出力電圧は 18μs 遅れているので、位相は 47° 遅れています。まぁ、だいたい同じってことで、いいかな?
ホワイトノイズとハイパスフィルタ
次は、ハイパスフィルタ回路にホワイトノイズを入力し、出力を観察してみます。
ハイパスフィルタ回路
全体の回路は図 1 と同じですが、ローパスフィルタ LPF をハイパスフィルタ HPF (図 12) に変更しています。抵抗 R2 とコンデンサ C2 は、LPF と同じ値なので、カットオフ周波数も同じく 7234Hz です。
入出力波形
図 13 の、黄色がホワイトノイズの入力波形です。縦のスケールを 2V/Div にしているので電圧が低いようにみえますが、ローパスフィルタのときと同じです。
青色が出力波形です。0V 付近の低い周波数の波形が消えて、高域のヒゲがそのまま出力されています。低域がカットされているようすがうかがえます。
図 14 は、ホワイトノイズ入力を FFT 演算した結果です。
横軸 (周波数) の中央が 5Hz で、目盛りは 2.5KHz/Div です。縦軸 (ゲイン) の中央は -30dBV です。
7KHz 以下のレベルは -32dBV ほど。1KHz 以下のレベルが上昇するのは、なぜ? あ、直流成分ってことかな?
ゲイン
図 15 は、ハイパスフィルタの出力を FFT 演算した結果です。
1KHz あたりが -35dBV に減衰していますが、7KHz あたりでは -32dBV であまり変化はみられません。低域が減衰していることは確かなようですが、あまりはっきりとはわからないですね。
図 16 は、ハイパスフィルタのゲイン線図です。横軸 (周波数) を等間隔目盛りにしてあります。
高域から 1KHz まで減衰してきているのですが、1KHz 以下はグラフのようにはなりません。
しかし、音を聞いてみると低域のゴーという音が消えているので、ローカット (ハイパス) フィルタの効果はでているようです。
正弦波とハイパスフィルタ
最後に、ハイパスフィルタ回路に正弦波を入力し、出力を観察します。
ハイパスフィルタ回路
入出力波形
図 18 の黄色が正弦波の入力波形です。ツイン T 形正弦波発振回路のコレクタ側の波形ですので、歪があります。
青色が出力波形です。基本波が減衰し高調波は通過するので、歪が増しているようです。出力の減衰率は 2.8dB です。
図 19 は、正弦波入力を FFT 演算した結果です。
横軸 (周波数) の中央が 20KHz で、目盛りは 10KHz/Div です。
基本波が -5dBV、第 2 高調波 -28dBV、第 3 高調波以上が -33dBV、-36dBV、-42dBV とでています。
ゲイン
図 20 は、ハイパスフィルタの出力を FFT 演算した結果です。
基本波が -8dBV に減衰。3dB の減衰率なので、入出力電圧でみた値とほぼ同じです。第 2 高調波は -26dBV ですが、第 3 高調波以上の減衰率は大きくありません。さらに上の高調波もしっかりみえています。
しかし、基本波の周波数をもっと低くして確認すべきでしたね。
位相
図 21 は、ハイパスフィルタの入出力をリサージュ図で表示した結果です。
CH1 軸上の高さが 20、全体の高さが 31 なので、sinθ = 20/31 より位相差 θ は 40° です。図 18 の入出力波形では、周期 140μs に対して出力電圧は 16μs 進んでいて、位相は 41° です。
後記
今回は、ローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路にそれぞれホワイトノイズと正弦波を入力し、出力を観察してみました。
なんかテキトーで雑な実験なので、これが正しい結果です、などと胸張ることなどできません。けど、雑な電子工作で作る雑なフィルタ回路は、まぁこれはこれでそれなりの結果になっているんじゃないかなぁと思っています。よかったんじゃないでしょーか。
さて、フィルタ回路の基本的なおさらいはできたので、アペアンプにもどりましょうか。次は、オペアンプを使ったアクティブフィルタを試してみようと考えています。