アフィリエイト広告

同軸ケーブルの先にあるアンテナをNanoVNAで測定したい

アンテナの測定はアンテナ直下で行わなければならない。言うは易し、なかなかそうはいきません。

送信機側で測定する方法はないのかな?

ネット探索で示唆された 2つの方法。
ひとつは、同軸ケーブル端で NanoVNA をキャリブレーションする。これは波長の影響を受けてしまうだろうし、どうも現実味が無いような気がするんだけど。
もうひとつは、NanoVNA の Electrical Delay を設定する方法。同軸ケーブルの長さによる伝送遅延時間を補正するということで、なんだかうまい話に思える。じつはこれ、スミスチャート上で負荷から離れて時計方向へ回転した反射係数は、離れた分だけ反時計方向に戻してやれば負荷インピーダンスになるわけだから、まぁ至極当然な話じゃないか。

ということで今回は、同軸ケーブルの先にあるアンテナを NanoVNA で測定する方法を模索してみます。

測定用ダミーアンテナ

図1. ダミーアンテナを測定する
図1. ダミーアンテナを測定する

以前作ったダミーアンテナ。共振周波数 145.0MHz、インピーダンス 75Ω の直列共振回路を仕込んだ疑似ダイポールアンテナです。これを再調整して NanoVNA で測定します。

図2. ダミーアンテナのインピーダンス
図2. ダミーアンテナのインピーダンス

直列共振点は、反射係数 (青) が容量領域 (X<0) から誘導領域 (X>0) へ変化する X=0 のポイントです。また、反射波電圧の位相 (黄) は共振周波数より低いとき遅れ、高ければ進みますから、共振点は位相が 0° の位置です。
ダミーアンテナの測定値は、共振周波数 145.00MHz でインピーダンスが 72.7-j0.00443Ω となっています。

測定に使用したダミーアンテナについては過去記事を参照ください。

1/2λ 長の同軸ケーブルをつないで測定する

1/2λ 長の同軸ケーブルをダミーアンテナにつないで測定してみます。

負荷 (アンテナ) から電源 (送信機) 側へ離れていくと反射係数はスミスチャート上を時計方向へ回転し、1/2λ だけ離れると 1回転して元の位置に戻ります。したがって、ダミーアンテナに 1/2λ 長の同軸ケーブルをつないでもインピーダンスは変化しない、はずです。

同軸ケーブルの長さと反射係数について過去記事も参照ください。ちなみに、この記事を書いた頃から送信機側でアンテナを測定する方法を探していたようですね。遠い目。

図3. 1/2λ 同軸ケーブルの長さを実測
図3. 1/2λ 同軸ケーブルの長さを実測

1/2λ 長の同軸ケーブルを作りました。
145.00MHz の1/2λ は短縮率を 67% として 0.693mです。実測した長さは 0.712m、これは 0.514λ に相当します。下手くそなのでぴったりの長さには作れませんねぇ。
中継コネクタの分は、えーっと、誤差、ということで。

図4. 1/2λ同軸ケーブルの長さ測定
図4. 1/2λ同軸ケーブルの長さ測定

NanoVNA で同軸ケーブルの長さを測定すると 0.706m で、0.509λ に相当します。7.03ns は往復の伝送時間です。長さの分解能は 26mm でした。

以下、実測値ではなく、NanoVNA が認識している 0.706m をこの同軸ケーブルの長さとします。

図5. 1/2λ離れた位置のインピーダンス
図5. 1/2λ離れた位置のインピーダンス

1/2λ 長の同軸ケーブルをダミーアンテナにつないで測定すると、インピーダンスは 75.3+j12.6Ω でした。0.509λ 離れているので 1回転するはずだけれど、ちょっと足りない。

離れた位置で測定されたインピーダンスを逆回転させて負荷インピーダンスを求めるには、NanoVNA の Electrical Delay を利用すればよいようです。

図6. 1/2λ遅延付きのインピーダンス
図6. 1/2λ遅延付きのインピーダンス

DISPLAY/TRANSFORM/VELOCTY FACTOR に同軸ケーブルの短縮率 67 を設定、DISPLAY/SCALE/ELECTRICAL DELAY に往復伝送時間 7.03ns(*1) を設定します。
負荷インピーダンスは 72.7+j16.0Ω となりました。0.509λ なので反時計方向に 1 回転、まぁそんな感じです。ちなみにレジスタンスがピッタリですけど、誤差の内、たまたまと考えましょう。

(*1) Electrical Delay に入力する値ですが、一般的に負荷方向へはマイナスの値で入力するものらしいです。が、俺が使用している NanoVNA-H4 では「往復の時間をプラスの値で入力する」ようです。実際に入力して試してみると、確かにそれが正しいとわかります。

以下のサイトを参考にさせていただきました。ありがとうございます。

1/2λ 長の同軸ケーブルをつけてキャリブレーションする

図7. 1/2λ離れた位置でキャリブレーション
図7. 1/2λ離れた位置でキャリブレーション

波長に対して影響を及ぼすような長さのケーブルをつないでその先端でキャリブレーションしようとしても、まともなことにはならないんじゃね? と想像されるわけですが、やってみます。

1/2λ 長の同軸ケーブル端でキャリブレーションし測定してみました。インピーダンスは 65.8-j25.8Ω と、ダミーアンテナの値とはやはり大きく異なってしまいました。

波長に対して影響のない長さ、たとえば 1/20λ とすると 145MHz で 69mm なんですよね。とすると NanoVNA に付属したピグテール (150mm) も長すぎるってことになりませんか。1.2GHz では 8mm だから、うーん、どうやって測定すればいいの?
DUT 端でキャリブレーションすることは基本なのでしょうが、長い同軸ケーブルの先端でキャリブレーションしても正しい値になりそうにない。これはどうすればいいのでしょう。あ、そうか、キャリブレーションした基準面からの長さを Electrical Delay で補正して測定する、ってことか。

こちらの動画がたいへん参考になりました。ありがとうございます。

7/2λ 同軸ケーブルをつないで測定する

図8. 7/2λ 同軸ケーブルの長さを実測
図8. 7/2λ 同軸ケーブルの長さを実測

以前、室内ダイポールアンテナ用に使っていた 7/2λ 長の同軸ケーブルではどうでしょうか。

実測した長さは 4.77m でした。これは 145.00MHz の 3.44λ に相当します。

図9. 7/2λ同軸ケーブルの長さ測定
図9. 7/2λ同軸ケーブルの長さ測定

NanoVNA で測定した長さは 4.8m、3.46λ です。分解能は 0.10m。往復伝送時間は 47.8ns でした。

以下、この値をこの同軸ケーブルの長さとします。

図10. 7/2λ 離れた位置のインピーダンス
図10. 7/2λ 離れた位置のインピーダンス

7/2λ 長の同軸ケーブルをダミーアンテナにつないで測定すると、インピーダンスは 67.8+j18.2Ω でした。
反射係数は時計方向へ 7 回転に少し足りないだけ回転しているわけですから、青のマーカーの位置はだいたい納得できる場所です。

位相グラフが -180° から +180° へ変化しているところは、同軸ケーブルの長さがその位置の周波数に対して 1/4λ に相当 (反射係数が 1/2 回転) しているポイントです。
共振しているダイポールアンテナの給電点は電圧が最小ですが、1/4λ 離れると定在波の電圧が最大になります。もしそこが送信機の出口だったら終段管に大きな電圧がかかってしまうかもしれない。これが昔からよく言われる「VSWR が高いと送信機が壊れる」という話の理由です。

図11. 7/2λ 遅延付きのインピーダンス
図11. 7/2λ 遅延付きのインピーダンス

Electric Delay で補正して、反射係数を逆回転させましょう。
ELECTRICAL DELAY に 往復の伝送時間 47.8ns を入力したのですが、画面上では 47.7ns と表示されました。なぜ? 距離は 9.60m で間違いありませんから、まぁ気にせずに。
インピーダスは 76.1+j7.00Ω となりました。ダミーアンテナのインピーダンス 72.7-0.00443Ω と、ほぼ同じ?ちょっと違う?

だいたいまぁそれらしい値にはなるわけですが、なんか微妙に違ってる。その違いはどこからくるんでしょう。キャリブレーション基準面を意識してキャリブレーションしたり補正したり、いろいろ試してみたけれど同じように違いがでます。やっぱり、NanoVNA 君の示すグラフを遠くから大雑把に眺めて、だいたいこのへん、と決めていくしかないのかなぁ。いまのところ、そんな感じです。

垂直ダイポールアンテナを測定してみたら…

さて、設置した垂直ダイポールアンテナですが、何度か大雨に見舞われて状態がずいぶん変わってしまっています。雨で VSWR が高くなるといった話は聞いたことがありますが、どうなのでしょう。

図12. ダイポールアンテナを送信機側で見た
図12. ダイポールアンテナを送信機側で見た

垂直ダイポールアンテナを送信機側で測定しました。

インピーダンスは 31.1-j8.16Ω と意味不明。同軸ケーブルの長さは 19.5m で 14.1λ に相当しますから、70° ぐらい反時計方向へ回転させてもかなり容量性な状態。位相角も大きくずれてしまっているじゃないですか。
設置時のチャートは これ

図13. 遅延補正したインピーダンス
図13. 遅延補正したインピーダンス

往復遅延時間 195ns を ELECTRICAL DELAY に設定しました。インピーダンスは 62.2-j26.2Ω とやはりかなり容量性。
あれ?距離が 40.9m になってる? これは VELOCTY FACTOR が 70 になっているせいですね。設定し忘れたようですが、誤差はわずかなのでご容赦ください。

垂直ダイポールアンテナに何がおきているのでしょうか?

後記

今回は、同軸ケーブルの先にあるアンテナを NanoVNA で測定する方法を模索してみました。

でもまだまだ五里霧中な気分。じつはその後も同じような実験を繰り返してみているのですが、わりと良好な結果になることもある。じつに迷走してます。

図4 の 1/2λ 長の同軸ケーブルの長さの測定で、グラフに小さな山がみえます。これがなにか気になっていたのですが、再測定では現れませんでした。その後、AliExpress で購入した安物の BNC コネクタが接触不良を起こすことがあるようだと気づいています。
誤差を生じるいろんなファクターがあるならば、測定を何度か繰り返して傾向をつかむのがよいのかも。繰り返しているうちにまたなにかを見つけられるかもしれません。

それでも、いろいろやりながら、負荷から離れたときのスミスチャート上での反射係数の回転や位相の変化について、あらためて確認できました。それから NanoVNA について、キャリブレーションの基準面のこと、Electrical Delay のこと、まだまだわからないことだらけですが、また少し使い方を知ることができました。
一歩ずつ、何かを知ることができたならそれでよしとしましょう。

さてさて、状態が変化してしまった垂直ダイポールアンテナをなんとかしないといけません。アンテナを外してドッグ入りとしましょうか。

タイトルとURLをコピーしました