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144MHz帯 垂直ダイポールアンテナ / NanoVNA で調整する

大雨にやられてしまった垂直ダイポールアンテナですが、しっかり防水処理して、その後は安定しているようです。送信機側からのインピーダンス測定もそれなりに傾向をつかむことはできそうですので、今回は外に設置した状態での測定、調整を行なってみましょう。

ダミーアンテナの測定

実際にアンテナを調整する前に、特性のわかっているダミーアンテナを給電点に取り付けて測定してみます。

キャリブレーションと Electrical Delay の設定

図1. キャリブレーションする
図1. キャリブレーションする

NanoVNA をキャリブレーションします。(図 1)
SMA(m)-BNC(m) のピグテールを接続し、その先端に BNC(f)-SMA(f) 変換コネクタを取り付けています。これでキャリブレーションするので、SMA(f) がキャリブレーションの基準面です。

図2. Elecrtical Delay を入力し測定面を補正
図2. Elecrtical Delay を入力し測定面を補正

変換コネクタを取り外し、Open 時の位相角が 0° になるように Electrical Delay を調整します。(図 2) ここでは -174ps を入力しました。これで BNC(m) が測定の基準面になります。

図3. ダミーアンテナを測定する
図3. ダミーアンテナを測定する

ダミーアンテナを測定すると 72.3-j4.46Ω と表示されました。(図 3) これが正しいダミーアンテナのインピーダンス。間違い、ない。

アンテナの給電点を測定面にする

アンテナの給電点が測定の基準面になるように、NanoVNA の Electrical Delay を設定してみましょう。

外に設置してある垂直ダイポールアンテナの測定には SMA(m)-BNC(f) のピグテールを使っていますので、これでキャリブレーションしておきます。
次に、給電点で同軸ケーブルを外しオープンにします。送信機側に NanoVNA を接続し、位相角が 0° になるように Elelctrical Delay を調整すると 193.76ns になりました。ディスプレイには 193ns 38.9m と表示されています。
この遅延時間から計算した同軸ケーブルの長さは 19.473m で、145.00MHz の 14.048λ に相当します。なお、以前の NanoVNA での測定では 19.6m 195ns でした。(前回記事参照)

図4. 送信機側からダミーアンテナを測定する
図4. 送信機側からダミーアンテナを測定する

給電点にダミーアンテナを取り付け、送信機側から測定したのが図 4 です。インピーダンスは 66.1+j0.530Ω と表示されました。

値は異なっていますが、なんかいい感じだと思いません? 位相角に大きな差はありません。インピーダンスを Mr.Smith にプロットしそれぞれに等 SWR 円を描くと、送信機側の円が少し小さい。つまり、反射波電圧が少し低くなっていることを示しています。

ダミーアンテナのインピーダンス ZL=72.3-j4.46[Ω]、送信機側からみたインピーダンス ZS=66.1+j0.530[Ω] をリターンロスで表すと RLL=-14.61[dB]、RLS=-17.15[dB] です。つまり、送信機側で測定すると 2.54dB 減衰している。同軸ケーブル 5D-2V の減衰量は 125dB/km (@200MHz)(*1) だから 19.437m で 2.43dB だけど、どうよ?インピーダンスの変化は同軸ケーブルの減衰量による?のかもしれない?

この減衰量?についてここでは、これも誤差の要因になるかもね、ってことに留めておくことにします。

インピーダンス整合回路の調整

ダミーアンテナの測定値がそれなりに使えそうな値になったので、すっかり気を良くしています。

現在のアンテナの状況

図5. 現在の垂直ダイポールアンテナの状況
図5. 現在の垂直ダイポールアンテナの状況

現在の垂直ダイポールアンテナの状況を確認しておきます。
図 5 は、送信機側で測定したトレースです。インピーダンスは 62.6+j9.22Ω、VSWR 1.32 で、日々多少の変動はありますが、雨が降っても変わりなくだいたいこんな感じです。

図6. 現在の給電点インピーダンス
図6. 現在の給電点インピーダンス

Electrical Delay 193.76ns を設定して測定した給電点インピーダンスは 54.2+j13.9Ω で、少し誘導性になっています。(図 6)
エレメントの長さは 0.94m で変更していません。以前から認識しているように整合回路のインダクタンスが大きすぎるようです。コンデンサも少し大きいと思っていましたが、これはそうでもないのかもしれません。

整合回路の計算

図7. 整合回路なしのトレース
図7. 整合回路なしのトレース

既設の整合回路を取り外し、新たなラグ板を取り付けました。その状態で測定したのが図 7 です。
ここではまだ整合素子は付けていないのですが、作業前の図 5 のトレースとあまり変化がありません。素子よりもラグ板やレセプタクルのリアクタンス分が効いているのかも?です。

図8. 整合回路の計算
図8. 整合回路の計算

Mr.Smith で、整合回路の計算をします。(図 8)
送信機側インピーダンスは 68.9+j5.12Ω (Marker0) です。同軸ケーブルの長さが 14.048λ なので 0.048λ だけ反時計方向へ回転させると、給電点インピーダンスは 60.5+j15.0Ω (Marker1) となります。
これに並列コンデンサ 13.4pF (Marker2)、直列コイル 29.4nH (Marker3) を接続して 50Ω に整合できました。

並列コンデンサを取り付ける

図9. 調整前の給電点インピーダンス
図9. 調整前の給電点インピーダンス

図 9 は、調整前の給電点インピーダンスです。インピーダンスは 58.0+j11.2Ω でした。図 8 の Mr.Smith での計算値と違いますが、じつは先の測定から 3 日が過ぎているので少し変化したようです。

まず並列素子としてコンデンサを取り付けてみますが、これまでの経験から計算より小さな容量になりそうなので 6pF にしてみましょう。

図10. 調整後の給電点インピーダンス
図10. 調整後の給電点インピーダンス

コンデンサ 6pF を取り付けたときのトレースが図 10 です。えーと、なんだかね、コンデンサだけでマッチングしてしまいました。計算通りにならぬのが現実です。
ちなみに、コイルの代わりに 0.65mmΦ 長さ 10mm ほどの銅線をつけてあります。インダクタンスは小さいでしょうがコイルの働きをしているかもしれません。

144.36MHz (Marker2) で位相が 180° になってますが、ここが直列共振周波数で、電圧定在波比 VSWR や リターンロス RL が最低になるポイントです。ついついさらに追い込みたくなりますが、どうせ状態は変化しますし、測定値には誤差もあります。とりあえずこれで十分としましょう。

ちなみに、共振周波数が低いからといって、ここでエレメントを短くするのは良い方法ではないと思います。理解が不十分でうまく説明できないのですが、エレメントを短くするとアンテナの放射抵抗が小さくなり放射電力も小さくなってしまいます。ようするにアンテナ電流の腹が最大にならない、最大の電流が流れない、ってことかな。ここでの調整はあくまでも整合回路で行ないましょう。
なので、じつは現在の 0.94m というエレメント長もちょっと気になっているんです。そのあたりは、また勉強していきましょ。

調整後の送信機側インピーダンス

図11. 調整後の送信機側のインピーダンス
図11. 調整後の送信機側のインピーダンス

図 11 は、調整後に送信機側で測定したトレースです。
インピーダンスは 51.4+j0.233Ω です。この程度まで反射係数が小さくなると、送信機側で測定してもほとんど差がなくなりますから、無理して給電点のインピーダンスを求める必要もなさそうです。
なお、このときの VSWR は 1.028 と算出されました。VSWR は反射係数の絶対値から算出されますから、送信機側でも給電点でも同じ値です。

後記

今回は、外に設置した垂直ダイポールアンテナを、送信機側から NanoVNA で測定し、調整してみました。

測定値には誤差があるでしょうけれど NanoVNA 君を信じましょうよ。なによりも、外が明るくてディスプレイが見えないとか、人が近くにいると測定値が安定しないとか、そんな不都合を解消できました。メリットは十分にあるんじゃないかと思っています。

ところで、上にもちょっと書きましたが、ここへきてエレメントの長さが MMANA の計算結果より短くなっていることが気になっています。NanoVNA で共振周波数を測定して決めた長さ (過去記事) なのですが、室内での測定ですし、はたしてどうなんでしょう? 短縮率 91% というのは短すぎると思いません?
ダイポールアンテナを共振させるのはなぜなのか? そんなことを考えながら、もう少し迷走してみようと思います。

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