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IC-551 修理 (1) / 電源ユニットを確認

押入れの奥で眠っていたアマチュア無線機 IC-551 を、一念発起、修理してみようと思います。が、修理できる目算はありません。修理する技術力もないです。とにかく触ってみることでなにかしらを学べればそれで良い、そんな気分でやってみましょう。

現状

写真 1. IC-551 故障している現在の状態

写真 1 は、現在の IC-551 のパネルの状況です。

AC100V では電源が入りませんでした。DC 入力に 12V (定格は 13.8V) を加えると、ランプが点灯しますが周波数表示が点灯しません。
送受信は未確認。マイクがありません。オプションとして FM ユニットがついています。

昔のことでよく覚えていないのですが、この無線機はあまり使っていなかったです。ある日突然に周波数表示しなくなり、そのままお蔵入りにしてしまったと思います。まだ新しかったんですけどね、あの頃もう、アマチュア無線熱も冷めてましたから。

閑話休題。
参考資料は取扱説明書 (日本語版、英語版)、そしてネットでみつけた先達たちの修理記事です。とにかく、できることから始めてみましょう。

電源ユニットを確認する

AC100V 入力で電源が入らないのですから、まずは電源ユニットを確認してみましょう。

電源ユニットには、AC100V から DC13.8V (HV) を出力するスイッチング電源と、メモリ用電源 DC10~14V (MEMO) の回路が収容されています。電源ユニットにある基板は PI と SW.REG です。ちなみに、送受信回路に利用する DC9V の電源回路は MAIN 基板にあるようです。
電圧の実測値は、HV が 0.34V、MEMO は 5.38V でした。どちらも正常な電圧ではありません。

電源基板 PI

PI には 2 つの回路があります。一つは AC100V を倍電圧整流している回路で、倍電圧 DC 出力は SW.REG へ渡されます。もう一つはメモリ用電源の回路で、電源トランスの出力を半波整流しています。また、倍電圧 DC 出力をアナログフォトカプラ IC1 で検出して PWM 発振回路の電源を出力し、SW.REG へ渡しています。

汚い手書きメモで恐縮なんだけど、図 1 がメモリ用電源の回路です。

図 1. メモリ保持用電源回路

H2、H3 は、電源スイッチがオンのとき、またはメモリスイッチがオンのときに AC100V が印加されます。電源トランス L2 の 2 次側の DC 出力は 16.1V、ツェナーダイオード D3 の電圧が 9.6V で、メモリ用電源の出力 H4 は 8.9V でした。これはあきらかに低いですね。
電源スイッチがオンになり倍電圧 DC が出力されると、それをアナログフォトカプラ IC1 で検知しトランジスタ Q1 がオンとなって H8 が出力されます。H8 は 10.2V でした。こちらは正常範囲でしょうか?

図 2. Q1 まわりの別の回路

一部の回路図では、Q1 のベース回路が図 2 のようになっているものもありました。
この回路の場合は、Q1 はベース側のコンデンサが充電されるまでの間だけオンになるので、H8 出力はワンショットになると思います。実際には H8 は連続して出力されているので、図 1 の回路になっているのではないでしょうか。あとで確認していきたいと思います。

とりあえずここまでは動作しているようですが、電圧がちょっと怪しげです。
あと、電圧が高いのであまり触りたくないんだけど、倍電圧 DC の出力電圧を確認しておかないといけないですね。これもあとでやりましょう。

スイッチング電源 SW.REG 1 次側回路

修理2日目、と言ってもすでに1週間過ぎて2025年になっています。修理できたとして、いったいいつになることやら。

図 3 は、スイッチング電源の 1 次側回路の概要です。

図 3. レギュレータ 1次側回路

PI 側で AC100V を倍電圧整流しています。AC が正のサイクルではダイオード D1+ からコンデンサ C5 を充電、負のサイクルでは D1- を通して C6 が充電されます。C5、C6 は直列になっているので、直流出力は倍の電圧になる、という仕組み。

アナログフォトカプラ IC1 で倍電圧 DC を検出しています。PI 基板を確認したところ、回路は図 1 のとおりでした。倍電圧 DC を検出して H8 から出力される電圧は発振回路の電源で、この回路の場合は常に H8 から供給されます。図 2 の回路の場合は、最初に H8 から電源を供給し、レギュレータが起動したらそちらの出力から電源をとっています。
どうやらこの IC-551 は初期のタイプのようです。

発生した倍電圧 DC を SW.REG へ渡し、トランジスタ Q1、Q2 でスイッチングしてトランス L6 から出力します。Q1、Q2 は交互にオンします。Q1 がオンしているときは C4~Q1~C10~L6~C4 と電流が流れ、Q2 がオンしているときは C5~L6~C10~Q2~C5 と流れるので、L6 から交流が得られる。図 3 には描いてないですが、それを整流して DC13.8V を出力しています。

倍電圧 DC 出力の電圧は 270V でした。倍電圧整流回路はうまく動いているようです。

その後、PI の各部の電圧を再確認しようとしたのですが、あれ? H8 から電圧が出ない。フォトカプラ IC1 の出力もない …

倍電圧 DC 出力に異常発生

写真 2. PI 基板と SW-REG 基板
写真 3. スイッチング用のトランジスタ

AC 電源のヒューズ (2A) が溶断しました。調べると、倍電圧 DC のラインがショートしているようです。
SW.REG を切り離してみると、PI 側は問題なし。原因箇所は SW.REG 側のようです。どうも Q1、Q2 が怪しい。ということでトランジスタを取り外してチェックすると、Q1、Q2 の両方とも CE 間がショートしていました。

やっちまいましたねぇ (;´Д`)

倍電圧 DC の測定などで不都合があったとは思わないのですが、なにがあったのでしょう。電源を何度かオンオフしたため? アースが浮いた? あるいはもとからトランジスタに不具合があった? 定かではないですけど、何らかの原因で Q1、Q2 が同時にオンしてしまったのかもしれません。

Q1、Q2 は MJE13003 (400V 1.5A) でした。初期タイプのものです。新しいタイプでは 2SC2501 (400V 3A) になっているようです。

さて、トランジスタの交換はあとで考えるとして、次は Q1、Q2 をドライブしている PWM コントローラ IC の発振出力を確認しないといけませんね。とりあえず今日はここまでにして、2A の管ヒューズを買ってくることにしましょう。

スイッチング電源 SW.REG 発振回路

さて、また日がかなり過ぎてしまいました。今日は、スイッチング電源の SW.REG 基板にある PWM 発振回路の動作を確認しようと思います。

図 4. PWM 発振回路

図 4 は、PWM 発振回路の概要で、コントローラ IC は SG3524 です。

H3 は PI の電源出力 H8 につながっています。倍電圧 DC が出力されたとき 10V (実測値) が供給されて発振回路の電源になります。

IC1 の CA (12)、CB (13) はオープンコレクタで交互にオンするので、パルストランス L5 に交番電流が流れます。これによりトランジスタ Q1、Q2 を交互にオンして、倍電圧 DC をスイッチングします。

現在、Q1、Q2 は、どちらもコレクタエミッタ間がショートしてしまっているので、取り外してあります。この状態で、H3 に外部から 10V の電源を供給して、単独で PWM 発振回路の動作を確認しました。

図 5. PWM 発振回路出力波形 一次側

図 5 は IC1 の出力波形で、黄色が CA (12)、青色が CB (13) です。

周波数は 23.5KHz (取扱説明書では 25KHz) でした。うまく発振しているようです。出力がオフのときの電圧が 20V と電源電圧の倍になっていますが、L5 の中点に電源がつながっているせいですね、異常じゃないです。

図 6. PWM 発振回路出力波形 二次側

図 6 は パルストランス L5 の2次側の出力波形 (黄色) です。出力が独立していて両方を同時に測定できないので、青色は無接続です。

これが正常なのかどうかはわかりません。けど、俺のテキトーな計算ではいい感じの電圧なんじゃないかなぁと思えます。テキトーなので書きませんが、代替トランジスタを選ぶときの目安のひとつになってくれるんじゃないかな。

写真 4. PWM 発振回路のテスト

PWM 発振回路は正常に動作しているようなので、次は PI に接続し、本体から AC を供給してテストしました 。ちなみに、回路のアースラインはシャーシを介してつながっていますので、分解中はアースの接続をお忘れなく。

結果、倍電圧 DC が出力されたときに発振することが確認できました。ここまで、正常に動いているようです。なお、倍電圧 DC は 276V、H8 出力電圧は 11V でした。

メモリ用電源

忘れていました。

メモリ用電源の電圧が低い

PI から出力されるメモリ用電源 MEMO の電圧ですが、取扱説明書では DC10~14V (20mA) となっています。しかし、メモリスイッチをオンした状態で 8.9V、電源スイッチを入れると 6V にまで下がってしまいます。修理開始前に測定した MEMO=5.38V がこれに相当しますね。

そこで、図 1 の MEMO 出力 H4 を開放して測定してみると、表 1 のようでした。

メモリスイッチオン (MEMO ON) のとき H4 はツェナー電圧で制限されています。電源スイッチオン (POW ON) で各部の出力が 12V 台で揃います。この値なら正常値のように思えます。

SW 状態整流出力H4H8
MEMO ON18.4V14.3V0V
POW ON12.8V12.4V12.7V
表 1. メモリ電源 無負荷時の電圧

H4 を接続したときの電圧降下から考えると 30mA ぐらい流れてしまっているようです。この先の回路になにか不具合があるのでしょうか。

後記

今回は、アマチュア無線機 IC-551 の電源ユニットの状況を確認しました。

スイッチングレギュレータのトランジスタが破損してしまいましたが、倍電圧 DC と PWM 発振回路の出力、メモリ用電源は正常なようです。修理を進めるならトランジスタを交換してということですが、とりあえず電源ユニットに関してはここまでにしておきます。

次は「周波数表示が点灯しない」という問題を確認したいのですが、はてさてどう調べていけばよいのか見当がつきません。ただ、メモリ用電源からつながる回路になにかありそうな気配があります。まずはそのあたりからでしょうか。ま、急がず、ゆっくり考えてみます。

ところで、先日 IC-551 のメンテナンスマニュアル (英語版) を手に入れました。これはとても助かります。取扱説明書の日本語版と英語版、そしてこのメンテナンスマニュアルを参考に、ぼちぼちと進めていきましょう。

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