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NanoVNA / CL を測定する治具を作る

高周波回路に使うコンデンサやコイルなどを NanoVNA で測定するための治具を作っています。

前回までに基本となるストリップラインを製作しましたので、今回は測定する素子を差し込む端子ピンを取り付けます。

なお、できあがったストリップラインは、周波数 148MHz において特性インピーダンス 46.705Ω、波長短縮率 0.577、実効比誘電率 3.004 となっています。

測定用治具の製作

図 1. 測定端子ピンを取り付けた治具
図 1. 測定端子ピンを取り付けた治具

ストリップラインの中央に 1mm ほどの切込みをいれて切断し、被測定素子を差し込むためのピンをハンダ付けしました。ピンは秋月電子通商で購入した丸ピン IC 用ソケット (6604S-40) を加工したものです。2.54mm ピッチで配置しますが、素子の足の幅に合わせられるように、入力側、出力側にそれぞれ 2 本ずつ取り付けました。
ラインから外れた上下のソケットは裏面のアースにつながっています。アースが必要な 3 端子素子などの測定用です。

ちなみに、測定端子ピンをジャンパでショートし、終端に 50Ω のプラグを取り付けて始端のインピーダンスを測定すると、前回測定したストリップラインだけの 50Ω 終端時のインピーダンスと変わりありませんでした。ピンを取り付けても特性インピーダンスへの影響はほとんどないようです。

NanoVNA の設定

実際にコンデンサとコイルを測定してみようと思いますが、まずは NanoVNA の設定とキャリブレーションを行ないます。

周波数範囲の設定

測定周波数の範囲ですが、アマチュアバンド 144MHz 帯の呼出周波数 145.00MHz を中心に ±50MHz 程度にしようと思います。キリの良いところで、次のようにしました。

STIMULUS / START = 100M
STIMULUS / STOP = 200M

ステップ数は 101 ですので 1MHz 間隔の測定となります。MARKER を 145MHz としておきましょう。

トレースの設定

測定したいのはキャパシタンスやインダクタンスですので、スミスチャートを表示させます。周波数に対する変化も確認しておきたいので、レジスタンスとリアクタンスも表示させました。

TRACE 0 : DISPLAY / FORMAT / →MORE / RESISTANCE
TRACE 1 : DISPLAY / FORMAT / →MORE / REACTANCE
TRACE 2 : DISPLAY / FORMAT / SMITH
TRACE 2 : MARKER / SMITH VALUE / R+L/C

表示スケール (DISPLAY / SCALE / SCALE/DIV) も見やすい値にしておきましょう。今回はレジスタンス、リアクタンスともに 100 としました。スミスチャートは 1.0 ですが、これは反射係数面としたときのフルスケールが 1.0 であることを表しています。

キャリブレーション

今回は反射係数 S11 のみの測定を行ないますので、CH0 だけキャリブレーションします。キャリブレーションは通常通りですが、具体的な方法は過去記事を参照ください。

なお、透過係数 S21 も測定する場合、THRU 調整は測定治具を通して CH1 へ接続してください。

Electrical Delay 補正

測定面を測定端子ピンの位置にしたいので、 Electrical Delay を設定して補正します。

測定面はキャリブレーション面よりも 25mm ほど遠くなります。波長短縮率が 0.577 なので管内の速度は 173×106m/s、距離 25mm の伝送時間は 145ps です。Electrical Delay は往復の伝送時間を設定するので 290ps を入力することになります。
終端に 50Ω プラグを取り付け、測定端子ピンをオープンにして、

DISPLAY / SCALE / ELECTRICAL DELAY = 290P

と設定すると、誤差として 3pF ほどを示していたキャパシタンスがほぼ 0 に補正されました。 誤差が残るときは入力値を修正してください。リアクタンスがマイナス (容量性) を示すならより大きな値に、プラス (誘導性) ならば値を小さくして、リアクタンスのトレースがプラス ⇄ マイナスに切り替わるところが目標値です。

コンデンサの測定

図 2. コンデンサの測定
図 2. コンデンサの測定

10pF のセラミックコンデンサを測定してみました。

図 2 のように測定端子にコンデンサを差し込みます。終端には 50Ω のプラグを取り付けます。始端はキャリブレーションされた NanoVNA の CH0 に接続しています。Electrical Delay で補正された測定面は、コンデンサが差し込まれた測定ピンの位置です。

図 3. コンデンサの測定結果
図 3. コンデンサの測定結果

図 3 がコンデンサの測定結果です。

コンデンサの容量は 145.00MHz で 9.96pF と表示されています。ピッタリですね。
レジスタンスは 49.4Ω で、終端抵抗と同じです。リアクタンスは -110Ω、値がマイナスなのは容量性であることを示しています。ちなみに容量性リアクタンス XC は、

XC = 1 / (2πx145.00x106x9.96x10-12) = 110.20 [Ω]

と計算できます。

緑のスミスチャートの軌跡は 50Ω の等レジスタンス円上を移動しています。容量領域なので、直列に接続した容量性リアクタンスの動きです。
青のリアクタンスのトレースは 145MHz で -110Ω を指しています。100MHz では -160Ω、200MHz で -80Ω と読み取れますが、マーカーを移動すれば値を表示できます。容量性リアクタンスなので周波数が高くなるにしたがってリアクタンス (絶対値) は小さくなっていきます。

コイルの測定

図 4. コイルの測定
図 4. コイルの測定

コイルは Φ0.65 の銅線で直径 6mm x 3T です。アンテナ解析ソフト MMANA のオプションでインダクタンスを計算すると 49nH となりました。

測定はコンデンサの場合と同じです。図 4 のように測定端子にコイルを差し込みます。終端に 50Ω のプラグ、始端は NanoVNA の CH0 に接続します。測定面はコイルが差し込まれた測定ピンの位置です。

図 5. コイルの測定結果
図 5. コイルの測定結果

図 5 がコイルの測定結果です。

コイルのインダクタンスは 145.00MHz で 45.9nH と表示されました。だいたい計算通りです。
レジスタンスが 50.3Ω、リアクタンスは 41.8Ω でプラスの値ですから誘導性です。

XL = 2πx145.00x106x45.9x10-9 = 41.818 [Ω]

スミスチャートでは、誘導領域で 50Ω の等レジスタンス円上を移動していますので、直列に接続された誘導性リアクタンスの軌跡です。周波数が高くなるとリアクタンスは大きくなっていきます。100MHz で 30Ω、200MHz では 60Ω と読み取れます。

後記

製作にずいぶんと時間がかかってしまったのですが、どうやら考えていたようなものになったみたいです。
こうした測定についての知識はほとんどなくてストリップラインすらも手探りでしたが、実際に測定してみると、なるほどそうかこんな感じなんだって納得しています。もちろん、これが正しいのかどうかまったく定かではないので、おかしなことをやっているようならまぁ嗤ってやってください。

この測定治具の終端を NanoVNA の CH1 に接続することで透過係数 S21 を測定できるので、フィルタなどの周波数特性も調べることができます。機会があったらやってみたいと考えています。途中にもちょっと書きましたが、その場合の THRU 調整は治具を通して行ないます。そうすることで治具での損失が校正されますから、より正確な測定ができるはずです。

さて、これでコンデンサとコイルの測定ができるようになったので、垂直ダイポールアンテナの再調整をしようかと思っています。じつは、冬に何回か着雪したあと VSWR が 2 近くまで上昇してしまいました。目視では浸水したなどの異常は認められないのですが、なにかが変化してしまったようです。ついでに、給電部の構造も改良したいです。お天気をみながら進めていきましょう。

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