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IC-551 修理 (4) / DC-DC コンバータ 試行錯誤編

今回は、DC-DC コンバータの破損していたトランジスタの代替品を選びます。

前回は、7 セグメント表示器と PLL ユニットに負電圧を供給している DC-DC コンバータ回路を調べ、電圧が出ていない原因が発振回路のトランジスタの破損だとわかりました。仮のトランジスタでのテストでは発振したので、適当な代替品を取り付ければ修理できると考えたのですが、果たしてうまくいくでしょうか?

DC-DC コンバータ回路

図 1 は、7 セグメント表示器と PLL ユニットに負電圧を供給している DC-DC コンバータの回路です。トランジスタ 2SC1214 が破損していますので、代替品に交換し、動作テストしてみます。
なお、テストは IC-18 と周辺回路をブレッドボードに組んで行ないました。C25、L2、L1 は取り付けていません。入力電圧は 12V、各出力に負荷として 10KΩ の抵抗をつけました。回路図に書き込まれた各部の電圧は、トランジスタを仮の 2SC1815 としたときの実測値です。

図 1. DC-DC コンバータ回路
図 1. DC-DC コンバータ回路

とりあえず試してみたけど…

meyon さん、ネットでなにやら注文したようですが…

トランジスタが届きました。俺の一押しは 2N5551L です。

2N5551L は 160V 600mA の NPN トランジスタですね。早速試してみましょう。ピンアサインが品番によって異なりますが、これは EBC のようです。念の為、テスターで hFE を測って確かめておきましょう。

EBC の順で取り付けて hFE は 220 ほど。間違いないです。

今後のために、丸ピンソケットを基板に取り付けておきましょうか。トランジスタの交換が楽になります。
じゃ、ピンアサインに注意して 2N5551L を取り付けて… スイッチ、オン。

あれ?電圧が出ないです。なにか焼けるような匂い… あ、トランジスタが熱い!

おっと、スイッチ、オフッ!
ベースに 1V、コレクタに 12V かかっていましたが、発振しなかったので大きなコレクタ電流が流れたのでしょう。でも、熱くなったのはトランジスタだけで、トランスは大丈夫みたいですね。
トランジスタも… 大丈夫、壊れてはいないみたいです。ベース抵抗 6.8KΩ でベース電流が 1.6mA とすると、コレクタ電流は 350mA 程度かなぁ。まぁ経験的にですが、電流で熱くなるのは意外と大丈夫なんですよ、過電圧では即死ですけど。

ベースをしっかり引き込めないのかなぁ? コンデンサ C1 の不良でしょうか?

どうでしょうか? まぁやってみましょう。0.01μF 50V のセラミックコンデンサに交換して… スイッチ、オン。

ああ、だめです、やっぱり発振しません。2SC1815 なら発振するのになぁ…

NPN トランジスタなら何でも良い、というわけにはいかないようですね、meyon さん。

発振回路に使うトランジスタは?

品番2SC1214-C2SC1815-GR2N5551L-B
VCBO50V60V180V
VCEO50V50V160V
VEBO4V5V6V
IC500mA150mA600mA
PC600mW400mW500mW
hFE100~200200~400150~240
用途低周波増幅低周波増幅スイッチング
発振×

トランジスタの仕様を比較してみましょう。

オリジナルは 2SC1214、テストに使用した 2SC1815、そして代替品候補の 2N5551L、それぞれのデータシートを見てみました。

最大定格は問題ないです。電流増幅率 hFE も同程度なのでいいでしょう。
とすると違いは電気的特性ですが、 2SC1214 と 2SC1815 の用途は低周波増幅用で、2N5551L はスイッチング用となっていますね。

増幅動作とスイッチング動作の違いはなんでしたっけ?

動作領域が違います。増幅は活性領域、スイッチングは飽和領域と遮断領域です。

トランジスタは、それぞれの用途に応じた動作領域で良好な電気的特性になっているんでしょう。
この DC-DC コンバータの発振回路は、C1 の充放電でスイッチングするのだから弛張型ですよね? スイッチング用でも良さそうだけど… あ、発振が始まるときには小さな振動が増幅されていくのだから…

そうか。発振回路には増幅用のトランジスタだよ。

トランジスタをいろいろ試す

秋月電子通商にあった 50V 500mA 以上の NPN トランジスタ (2025年 5月現在) で、パッケージが TO-92、TO-92NL のものを選んで、発振するかどうかを試してみました。

品番用途発振
2N5551L-Bスイッチング×
MPSA42Gスイッチング×
BTD1768A3-R低周波増幅・汎用
BTL2222A3-N汎用
2SC2655L-Y増幅・スイッチング

スイッチング用の 2N5551L、MPSA42G はまったく発振しませんでした。
2SC2655L は発振しますが、コレクタ電圧波形に小さなツノのようなものがでました。影響があるかはわからないですが、ちょっと気になります。

2SC1815 と同じように発振したのは BTD1768A3 と BTL2222A3 でした。

品番2SC1214-CBTL2222A3-NBTD1768A3-R
VCBO50V75V150V
VCEO50V50V80V
VEBO4V6V7V
IC500mA600mA1A
PC600mW625mW750mW
hFE100~200120~270200~400
用途低周波増幅汎用低周波増幅・汎用
ピンBCEEBCECB

仕様を確認しましょう。

BTL2222A3 と BTD1768A3、どちらでも良さそうです。
ただ、2SC1815 でテストしたときに、コレクタ電圧のピークが 30V を超えていましたよね。 俺の感覚なのですが、VCEO 50V ではちょっと不安です。
それから、2SC1214 のピンアサインが BCE だったので、ECB のほうが取り付けしやすいですよね。

ということで、BTD1768A3 を採用しようと思います。

トランジスタ BTD1768A3 での動作テスト

テスト用の DC-DC コンバータ回路にトランジスタ BTD1768A3 を取り付け、2SC1815 の場合と同様に発振することを確認しました。そこで、もう少し大きな負荷を与えて動作状況を確かめてみようと思います。

実際の負荷がどれくらいなのかはわかりませんが、想像してみましょう。
-18V ラインは蛍光表示管のアノードをプルダウンしていて、アノードには CPU から +9V がかかる。プルダウン抵抗は 47KΩ だから 7 セグメント 7 桁全点灯で 28mA です。テストでは 1.5KΩ つないで 12mA 流してみましょうか。消費電力が 226mW なので、1/4W 型は熱くなりますから注意しましょう。
フィラメント電流は、前回考えたように 5mA として 680Ω つなぎます。
-10V ラインはオペアンプの負電源のようですので、まぁ 1KΩ つないで 10mA としましょうか。

図 2. 負荷電流を流したときの電圧波形
図 2. 負荷電流を流したときの電圧波形

図 2 は、-18V 12mA、-10V 10mA、AC3.3V 5mA を出力したときのコレクタ電圧 (黄)、トランス二次側電圧 (青) です。

うまく発振していて電圧波形も問題ないようです。
が、周波数が 233KHz に下がりました。電流が大きくなるとコンデンサの充放電時間が長くなるため、ですよね?

図 3. 発振開始時の電圧
図 3. 発振開始時の電圧

上で発振開始時のことを考えたので、電源オン時の電圧を確認してみました (図 3)。黄がコレクタ電圧、青がトランス二次側電圧です。

出力が安定するまでに 90ms かかっていることがわかります。最初の小さな振動を増幅していく、のですね。最終的に飽和するので方形波になる、と。

ちなみに、45ms でコレクタ電圧が 50V を超えています。やはり VCEO 50V では足りませんね。

断線していたチョークコイル L2 の代替品ですが、寸法などの関係でマイクロインダクタ 1mH 400mA を選択しました。直流抵抗の実測値は 6.1Ω で、動作テストでの電圧降下は 0.34V でした。したがって、DC-DC コンバータ回路への入力電流は 55.7mA ということになります。
スイッチングノイズの除去用なのでマイクロインダクタでいいんだろうと考えているのですが、どうなんでしょう? -10V 出力の L1 を測ると 2Ω ありましたし、入力側で 6.1Ω あっても、まぁいいかなぁ、って。

後記

写真 1. DC-DC コンバータ回路の動作テスト
写真 1. DC-DC コンバータ回路の動作テスト

今回は、DC-DC コンバータの破損していたトランジスタ 2SC1214 の代替品として BTD1768A3 を選び、動作テストを行ないました。

初めは、最大定格だけを見てテキトーにトランジスタを選んでしまいました。ちゃんと用途を考えなければうまくいくはずはないと、わかっているつもりで、わかってないんですねぇ、俺。勉強させてもらいました。

ともあれ、たぶんこれで DC-DC コンバータはうまく動作してくれるでしょう。… くれるといいな。

次回は、IC-18 をドライバ基板に取り付け、7 セグメント表示器が点灯するか、確かめようと思います。

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