アマチュア無線機 IC-551 の修理記録です。今回は、トランジスタを代替品に交換した DC-DC コンバータをドライバ基板に取り付け、7 セグメント表示器の動作を確認しました。
前回は、破損したトランジスタ 2SC1214 の代替品としていくつかのトランジスタを試し、うまく動作してくれそうな BTD1768A3 を選びました。これを IC-18 に取り付け、ドライバ基盤に戻し、本体を組み立てます。電源を入れる瞬間は、やっぱり緊張、しますよねぇ。
IC-18 をドライバ基板に取り付け
破損したトランジスタを代替品 BTD1768A3 に交換したモジュール IC-18 を、ドライバ基板に取り付けました。(写真 1)
トランジスタは丸ピンソケットを取り付けて差し込んであります。良い方法だとは思わないのですが、もしまたトランジスタが壊れたとき、IC-18 を外さなくても交換できますので。
IC-18 の左側の断線していたチョークコイル L2 は、右下の “101J” と表示されたチョークコイル L1 と同じ形状の “102J” でした。同じ部品は手に入りそうにないので、秋月電子通商で購入したマイクロインダクタ 1mH 400mA に交換しました。
部品を取り外すとき注意はするのですが、どうしてもプリントパターンが剥がれたりしてしまいます。経年劣化もあるんでしょうね。なので、ジャンパ線とかでうまく修理してつなぎましょ。
チョークコイルと一緒に取り外したコンデンサ C26 47μF 50V も交換しました。これは部品箱に常備しているパーツです。
出力側の C27、C31 も交換したかったのですが、ドライバ基板の裏に謎の IC が載ったモジュールが貼り付けられていて、そいつを外さないと交換できなかったのでやめました。リップルもないので、問題ないだろうと思います。ただねぇ、-10V 出力に実装されている C27 が 47μF 10V なんだよねぇ、どうよ? それでいいのか?
7 セグメント表示器が点灯
ということで、ついに、IC-551 は 40 年の眠りから覚めて動き出しました。(写真 2)
チューニングツマミを回すと周波数表示が変化します。電源オン時に異常表示することもないので、 CPU のリセットもうまくいっているようです。
ただ、ダウン時に周波数が変化しないことがあるみたいです。エンコーダの読み取りの問題だろうと思うのですが、これは今後調べてみましょう。
TS ボタンが接触不良でしたが、オンオフしているうちに少し改善してきています。MS/MW ボタンは問題ないようです。
スピーカーからノイズが聞こえています。NanoVNA をシグナルジェネレータにしてみると、信号を受信しました。周波数のズレもないようです。
適当な電線をアンテナ代わりに取り付けると、ローカル局の電波が受信できました。SSB も FM も復調できています。50.313MHz でなにやら信号が聞こえました。50.313MHz は FT8 の国際標準周波数だそうなので、FT8 の電波でしょうか。
すごいよ、生きてますよ、IC-551 君。
表示器周りの信号を確認
全体を組み立てるとうまく測定できない場所が多くなってしまうのですが、いくつかのポイントの信号波形を確認してみました。なお、数値はすべてオシロスコープによる測定値です。
DC-DC コンバータのトランス出力
図 1 は、DC-DC コンバータ IC-18 のトランス二次側の出力電圧です。
電圧は 40VP-P でテストのときと同じです。
周波数が 300~400KHz に変動しています。負荷テストのとき 233KHz でしたから、実際の出力電流は小さくなっている? 周波数の変動は出力電流が変化しているから? でしょうか。
でもまぁ、直流出力に影響はないようですから。
蛍光表示管 LD8231 の制御電圧
図 2 は、蛍光表示管のフィラメント端子と GND 間の電圧波形です。
カソード電圧 DC -14V に、フィラメント電圧 AC 3V が重畳されている様子がわかります。
ここでの周波数変動はさほど大きくなく、気にならない程度です。
図 3 は、グリッドの電圧、CPU の Rn 出力信号です。
グリッドは各桁の点灯制御を行っています。周期は 16ms (61.9Hz)。つまり、ダイナミック点灯で 16ms ごとにその桁が 1ms だけ点灯している、ということです。ダイナミック点灯の仕組みは 7 セグメント LED でも同じですね。
図 4 は、アノードの電圧、CPU の On 出力信号です。
ドットを含めて 8 つのアノード (セグメント) があり、電圧をかけたアノードが光ります。これも 7 セグメント LED のダイナミック点灯と同じです。
CPU (P-MOS) の出力回路は、たぶん Pch MOSFET のオープンドレイン (ハイサイドスイッチ) でしょう。オンのときに +9V が出力され、オフのときはハイインピーダンスで DC-DC コンバータの出力 -18V にプルダウンされます。カソード電圧は -14V なので、アノードが -18V のときは点灯しません。アノードが +9V のとき、カソードに対するアノード電位は +23V になるので、セグメントが点灯します。
当初、なんで -18V が必要なの? と思ったのですが、P-MOS IC の出力で直接蛍光表示管を制御する技のようです。DC-DC コンバータ回路の参考にさせてもらった YAESU FT-480R では、CPU 出力で PNP トランジスタのハイサイドスイッチを制御していました。同様の仕組みです。
カソード電圧をマイナスにバイアスしておき、PIC の出力でハイサイドスイッチを直接制御する。これ、どこかで使えるかもしれませんね。覚えておきましょう。
後記
今回は、不動作の原因だった DC-DC コンバータ IC-18 の修理を行ないました。IC-551 は起動し、受信もできているようです。半ば諦めていたアマチュア無線機 IC-551 ですが、動きました。嬉しいかぎりです。
でも、やはり 40 年も放置されていたアマチュア無線機には、いろいろ傷みがあるようです。
電源ユニットの修理は手つかずです。チューニングツマミをダウン側へ回すときエンコーダの読み取り不良が起きるようです。TS スイッチの接触不良は我慢できる程度におさまるでしょうか。はたして受信感度は十分でしょうか? アンテナが欲しいです。送信はできますか? テストのためにダミーロードが必要です。あ、マイクがないや。電鍵もほしいよ。
それより何より、試験電波を発射するには免許が必要です。無線局の変更申請をしないといけません。
ゴールは、まだまだ遠いようです。