以前作った「トライアックによる電力調整 − 位相制御」では、秋月電子通商で購入したソリッドステートリレー (SSR) キットを改造して位相制御できるようにし、Arduino からトリガパルスを出力して AC100V の電力調整を行いました。
今回はそれを元に、パワーコンロトーラを作ってみようと思います。
パワーコントローラの仕様
発端は 30W の半田ごての過熱防止用にパワーコントローラが欲しいなと思ったこと。
市販品はいろいろあるけど、ちょっとしたパワーコントローラなら自分でも作れるじゃん、電子工作やってんだし (^_^;)
SSR キットを改造して作りましょ。でも使っているトライアックは 20A 用なので、どうせなら 10A ぐらいまで出力できたらいいな、と。いやいや、そんなに欲張りません。300W の電熱ヒーターが制御できたら嬉しいな。
ってことで、そんな仕様とします。まぁ、いい加減っす ( ゚Д゚)
なお、ボリュームで出力調整できるようにしますが、Arduino は使いません。位相制御だけなら難しいものではありませんので、トランジスタとコンパレータで作ります。
今回は予定していませんが、1-5V とか 4-20mA とかの信号を受けて出力制御することも可能なように考えておきたいと思います。
トライアック位相制御回路
図 1 のような回路にしてみました。
下の部分は DC5V の電源回路です。ゼロクロスパルスを得るためにトランスを使用しています。C6 はコンパレータ IC2 のパスコンです。
右上部分は SSR キットを改造したトライアックの回路です。改造点は、フォトトライアックをゼロクロスタイプから非ゼロクロスタイプに変更したこと。トライアックの G – T1 間に抵抗 R2 を付けたこと。
そして今回新たに作ったのが、そのトライアックを位相制御する左上の部分。フォトカプラとトランジスタ、コンパレータでできています。
フォトカプラ PC1 は両極性タイプで、ゼロクロスパルスを出力します。
Q1 と R15 、C5 がのこぎり波の発振回路です。出力波形は図 2 のようになっています。
逆のこぎり波っていうんでしょうか、コンデンサの放電を利用した、だんだん電圧が下がっていくのこぎり波です。こののこぎり波と VR1 の基準電圧をコンパレータ IC2 で比較してトリガパルスを出力しています。
のこぎり波の電圧が基準電圧より低くなると、コンパレータ出力が HIGH になり、トライアックが ON します。
基準電圧が低いときは、ゼロクロスのタイミングより大きく遅れてトリガパルスが出るので、出力電圧は低くなります。逆に基準電圧が高いときは、ゼロクロスに近いタイミングでトリガされ、高い電圧が出ます。
これで、ボリュームの出力電圧によって位相制御ができます。
のこぎり波の電圧は 0.85V から 4.58V なので、基準電圧として Arduino などからの出力を利用することも簡単にできると思います。
コンパレータの出力はオープンコレクタです。R18 でプルアップし、Q2 でフォトトライアックを駆動します。
この回路、じつは、電源投入時にコンデンサ C5 の電位がゼロなので、最初のゼロクロスパルスが入るまでの半サイクル、電圧が出てしまいます。用途的に影響ないので無視してますが、問題あるなら、10ms ほどの遅延タイマーいれるなりすればいいかな、と。
実装してみましょう
いつもなら回路をブレッドボードに組んでおしまいですが、今回はケースに実装して、使えるパワーコントローラを作ります。となると、金属ケースを加工してってことなんでしょうが、うーん、面倒だなぁ。ちょっと違うことを考えてみます。
図 3 は、コンセントやスイッチを壁に取り付けるための露出型スイッチボックスです。こいつを使ってみようかと。
ただ、プラスチック製なので、トライアックの放熱をどうするか。SSR の説明書によると 10A を連続で流す場合は 2mm 厚のアルミ板 10cm x 10cm が必要だとか。熱抵抗で言うと 10℃/W 以下になるのかな。
なんか適当なヒートシンクかアルミ板か、適当に付けましょう。
図 4 がコントロール回路基板です。ユニバーサル基板にぱたぱたと組みました。
電源の三端子レギュレータは、さほどの負荷もないのでヒートシンクなどは付けていません。
ボリュームは出力電圧の調整用です。
最終的には、基板下縁の 5mm 位を切り取って、少しサイズを小さくしています。取付用の 3mm 穴も開けました。
基板のウラ面は図 5 のようになっています。
あまりうまくできてないんだけど、まぁこんなものでしょう (^_^;)
コネクタについては最後までどうするか迷っていました。結果的に XH コネクタを付けたので、その部分だけジャンパーになっちゃってます。
図 6 はトライアックと、SSR キットに付属していた制御基板です。
基板の、トライアックを取り付ける部分には G-T1 間の抵抗をつけてあります。
フォトトライアックは、非ゼロクロスタイプに変更しています。
トライアックから伸びている黒の電線は 2mm2 撚線です。
基板からトライアックへの線の向きが反対になっていますが、じつはヒシチューブが 3mmΦ だったので、細くて入らなかったという (^_^;)
電源トランスをどうやって取り付けるか、ちょっと悩んでいたのですが、専用の基板がありましたのでそれを利用することにしました。
図 7 のように、ヒューズホルダも取り付けられるので良い具合です。
トランス 2 次側のヒューズは付けませんので、ジャンパしています。切り取って小さくしてしまう手もありますね。
これらのパーツを取り付けるために、図 8 のようにケースを加工、基板用のスタッドはグルーガンで付けてあります。
一部余計な穴があいていたり、グルーガンがグチャグチャなのはご愛嬌です。
左側の四角い穴はヒートシンクの取付用です。
パーツ屋さんにあった 45 x 30 x 20mm のヒートシンクで、規格がよくわからないのですが、10℃/W ぐらいかなぁと思います。
図 9 のように、各部品をケースに実装しています。
10A を流すために電線は 2mm2 撚線を使っています。コンセントとスイッチは 1.6mm 単線用なので、あまり良い方法ではないのですが、ハンダ上げして挿入しています。
ボリュームのサイズが、ブランクチップにぴったりなのですが、ぴったりすぎてセンターに取り付けられませんでした。まわりを削るなどしても良かったのですが、取り付け位置を下に変更することも考えているので、こんな感じです。
ヒートシンクは L 型の金具で取り付けています。0.5mm 厚だったのでちょっとぐらつきます。ご愛嬌です (^_^;)
ということで、図 10 のように完成しました。反対側からみたのが図 11 です。
写真にはないですが、下面にゴム足を貼り付けておきました。
電源ケーブルは 2mm2 を用意しましたが、10A なら 1.25mm2 でもいけます。0.75mm2 なら 7A ぐらいでしょうか。細いほうが扱いが楽ですけど、熱くなります。
スイッチを入れて、ボリュームを右へ回すと、コンセントから電圧が出力されます。単純なパワーコントローラです。
ヒートシンクは、厚みの半分ほどが外にでています。300W の電熱器をつなぐと、少し暖かくなります。
1200W のヘアドライヤを 70% ぐらいで回すと、数分でかなり熱くなります。触感ですが、60℃ 以上はありそう。まぁ、ここまで使うことは、ないような気がします。
んなわけで完成しましたが、安全性なんて保証しません。できません。真似して作ってみようなんて酔狂な人はご注意下さい。