汎用オペアンプ LM358 で、次はアクティブフィルタを試してみようと考えていたのですが、その前に、パッシブフィルタのおさらいをしておこうと思います。
今回は、抵抗とコンデンサで構成するローパスフィルタとハイパスフィルタの、ちょっとだけ理論的なお話。が、まぁ、俺の頭の程度ですので、いい加減なところはご容赦を。
ローパスフィルタ
図 1 は、抵抗 R1 とコンデンサ C1 で構成されたローパスフィルタの回路です。
周波数の高い信号は C1 でバイパスされるので減衰し、周波数の低い信号だけが通過できると、回路から簡単に想像することができます。
伝達関数
入力電圧を Vin とすると、出力電圧 Vout は、
です。G(s) は伝達関数と呼ばれ、入力と出力の関係を表す関数です。ローパスフィルタの伝達関数は、
となります。… だそうです。
s って何? s 領域? ラプラス変換? システムの数式モデルの計算を簡単にする魔法ですが、気にしないでおきましょう。伝達関数 G(s) に jω を代入すると、システムの周波数特性となります。フーリエ変換? 気にしないでおきましょう。
ローパスフィルタでググると出てくる伝達関数の公式になりました。j は虚数単位、ω は角速度で ω = 2πf です。これなら俺にもわかりそうです。
分圧回路として考える
ローパスフィルタは、入力電圧 Vin を抵抗 R とコンデンサ C で分圧する回路と考えることができます。コンデンサのリアクタンスを Xc とすると、
ですから、伝達関数 G(jω) は、
と、同じ式になりました。
ちなみに、入力側の電源の抵抗は 0、出力側の負荷抵抗は ∞ と考えています。実際の回路が計算式どおりにならないのは世の常です。
ゲイン
伝達関数 G(jω) の大きさ (絶対値) |G(jω)| は出力電圧と入力電圧の比、すなわちゲイン (増幅率) を表しています。
これをデシベル dB で表すと、
式からわかるように Gv はマイナスの値になります。増幅率がマイナス、つまり出力は減衰するということです。周波数 ω が高くなるほど分母が大きくなるので、減衰率も大きくなっていきます。
カットオフ周波数
ここで、抵抗 R とリアクタンス Xc の大きさ (絶対値) が等しい場合を考えます。
なので、
この周波数 f をカットオフ周波数といいます。カットオフ周波数でのゲインは、
となります。電圧が 1/√2 なので、電力は 1/2 になる。そのときの周波数がカットオフ周波数で、減衰率は 3dB です。
位相
伝達関数 G(jω) を複素数で表してみましょう。
となるので、G(jω) の位相角 θ は、
です。
カットオフ周波数では ωRC=1 なので、
出力電圧の位相は 45° 遅れることになります。
ボード線図
では、ローパスフィルタ回路の周波数特性を計算してみましょう。左に図 1 を再掲します。
といっても計算は面倒なので、計算ツールを使用させていただきました。ありがとうございます。以下のボード線図は、計算出力を Google スプレッドシートでグラフ化したものです。
ゲイン線図
図 3 は、ローパスフィルタの周波数対ゲインのグラフです。
フィルタ回路のカットオフ周波数 fc は、
で、カットオフ周波数でのゲインは -3dB と読みとれます。
カットオフ周波数より低い周波数は通過領域で、減衰量は大きくありません。カットオフ周波数より高い周波数は減衰領域で、周波数が高くなるにしたがって減衰量も大きくなります。周波数が 2 倍になると 6dB 減衰量が増えるようです。
計算式で確認してみましょう。ゲイン Gv は、
この式において、周波数が高いとき (ωRC≫1)、分母の √ の中の 1 は無視できます。周波数 ω が 2 倍になると分母は 2 倍となり、Gv は -6 dB/oct です。oct は周波数が 2 倍 (octave) であることを意味します。同様に、ω が 10 倍になると分母は 10 倍になり、Gv は -20 dB/dec になります。dec は周波数が 10 倍 (decade) であることを表しています。
つまり、周波数が n 倍になると出力電圧が 1/n 倍になる、ということです。
位相線図
図 4 は、ローパスフィルタの周波数対位相のグラフです。
カットオフ周波数 7234Hz では、出力電圧の位相角は -45°、つまり、45° の遅れ位相です。通過領域では遅れは 45° より小さく、遮断領域では 90° に近づいていきます。
ハイパスフィルタ
図 5 は、抵抗 R2 とコンデンサ C2 で構成されたハイパスフィルタの回路です。
周波数の低い信号は C2 で阻止されるので減衰し、周波数の高い信号だけが通過できると、回路から簡単に想像することができます。
伝達関数
ハイパスフィルタの伝達関数 G(s) は、
です。G(s) に jω を代入すると回路の周波数特性を知ることができます。
ゲイン
ハイパスフィルタのゲインは、伝達関数 G(jω) の絶対値です。
デシベル dB で表すと、
となります。分母のほうが大きくなるので、Gv はマイナスの値になります。周波数 ω が高くなると分数が 1 に近づくので、減衰率は 0 に近づいていきます。
カットオフ周波数
抵抗 R とリアクタンス Xc の大きさが等しいとき、
となるので、このときの周波数 f は、
この周波数がカットオフ周波数です。カットオフ周波数でのゲインは、
です。
位相
伝達関数 G(jω) を複素数で表すと、
したがって、G(jω) の位相角 θ は、
です。カットオフ周波数での位相角は ωRC=1 より、
出力電圧の位相は 45° 進むことになります。
ボード線図
ハイパスフィルタの周波数特性を計算してみます。図 5 を再掲しました。
計算は計算ツールを使用させていただきました。ありがとうございます。以下のボード線図は、計算出力を Google スプレッドシートでグラフ化したものです。
ゲイン線図
図 7 は、ハイパスフィルタの周波数対ゲインのグラフです。
フィルタ回路のカットオフ周波数 fc は、
で、カットオフ周波数でのゲインは -3dB です。
カットオフ周波数より低い周波数は減衰領域で、ゲインは +20dB/dec で上昇しています。つまり、周波数が 10 倍になると出力電圧は 10 倍になります。 カットオフ周波数より高い周波数は通過領域です。
位相線図
図 8 は、ハイパスフィルタの周波数対位相のグラフです。
カットオフ周波数 7234Hz で、出力電圧は 45° 進んでいます。減衰領域では 90° に近づき、通過領域では進み位相が小さくなっていきます。
後記
今回は、ローパスフィルタとハイパスフィルタの周波数特性についておさらいしてみました。内容は相変わらずの meyon 的いい加減な解説ですが、まぁフィルタってこんな感じ?ぐらいには理解できたかなと思います。
ちなみに、ローパスフィルタ回路って積分回路と同じじゃないですか。入力電圧 Vin を振幅 A の正弦波とすると、
これを積分すると、
出力電圧の振幅が A/ω になりました。つまり、周波数が 2 倍になると出力電圧が 1/2 倍 (-6db/oct) に、周波数が 10 倍になると出力電圧が 1/10 倍 (-20dB/dec) になるローパスフィルタと同様の特性になっています。また、積分すると位相が π/2 (90°) 遅れることもわかります。
一方、ハイパスフィルタ回路は微分回路と同じです。正弦波を微分すると、
出力電圧の振幅は ωA です。この場合は、周波数が 2 倍になると出力電圧が 2 倍 (6dB/oct) に、周波数が 10 倍になると出力電圧が 10 倍 (20dB/dec) になるハイパスフィルタと同じです。そして、位相は π/2 (90°) 進みます。
もちろん、実際の回路には時定数 (RC) があるので、ボード線図のような特性になります。
フィルタ回路って、形は簡単だけど奥が深いです。まだまだわからないことだらけですが、回路を作るときの参考になったらいいなと思います。