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オペアンプの電気的特性を調べてみた

オペアンプの電気的特性について調べてみましょう。
といっても、手元にある計測器といえば安物のオシロスコープぐらいです。なので、電気的特性の雰囲気が感じられれば良しとします。

前回は、オペアンプの基本的な構成の増幅回路に直流電圧を入力して増幅動作を確認してみました。でも、教科書にあるような回路をポンと持ってきてもうまくいかないですね。学ばなければならないことがたくさんありそうです。

入力オフセット電圧

入力オフセット電圧を測定してみます。入力オフセット電圧 (Input offset voltage) とは差動入力回路の誤差電圧のことです。

キャンセル抵抗がある場合

図1 が入力オフセット電圧を測定してみた回路図です。

オフセット電圧を測定する回路 (キャンセル抵抗あり)
図1. オフセット電圧を測定する回路 (キャンセル抵抗あり)

オペアンプは LM358。単電源動作ですので、差動入力がプラスでもマイナスでも動作するようにバイアス電圧を与えます。R11、R12 が電源電圧 VCC=10V の中点をバイアス電圧 VB=5V に設定するための分圧抵抗です。

LM358 はバイポーラ型で差動入力回路は PNP トランジスタです。入力バイアス電流、入力オフセット電流は主にベース電流で、電流は IC から流れ出す方向になります。
キャンセル抵抗 R3、R4 は帰還抵抗 R1、R2 を並列とした値 (半端な値になるので R1、R2 と同じ抵抗を並列接続しています) とし、入力バイアス電流により発生する入力オフセット電圧をキャンセルします。入力オフセット電流が 0 であれば入力電圧 VIN(+) と VIN(-) は同電位になり、入力オフセット電圧も 0 になるはず。

同一箇所を測定したときの誤差
図2. 同一箇所を測定したときの誤差

測定の前にちょっとオシロスコープの話。

図2 は、バイアス電圧 VB を CH1 と CH2 で測定しその差分 CH1-CH2 (赤) を表示させたものです。
同じ場所を測定しているので差分は 0V になるべきですが、チャンネルによって測定値に差があるため 26mV になっています。

安物のオシロスコープですので、ご容赦を。以下、この電圧 26mV を誤差として差し引くことにします。

出力オフセット電圧 (キャンセル抵抗あり)
図3. 出力オフセット電圧 (キャンセル抵抗あり)

出力電圧 VO (黄)、バイアス電圧 VB (青) を測定しました (図3)。その差分電圧 (赤) が出力オフセット電圧です。
クローズドループ利得は、

GV = 1 + R2/R1 = 1 + 100 / 1 = 101

ですので、入力オフセット電圧 VIO は、

VIO = (5213 - 5160 - 26) / 101 = 0.27 [mV]

となりました。データシートの入力オフセット電圧は 2.9mV ですので、いい値なんじゃないでしょうか。

キャンセル抵抗がない場合

では、キャンセル抵抗がないとき入力オフセット電圧はどうなるでしょうか。図4 はキャンセル抵抗 R3、R4 をなくした回路です。それ以外は図1 と同じです。

オフセット電圧を測定する回路 (キャンセル抵抗なし)
図4. オフセット電圧を測定する回路 (キャンセル抵抗なし)
出力オフセット電圧 (キャンセル抵抗なし)
図5. 出力オフセット電圧 (キャンセル抵抗なし)

図5 のように、出力オフセット電圧がマイナスに大きく動きました。入力オフセット電圧 VIO は、

VIO = (5022 - 5157 - 26) / 101 = -1.59 [mV]

です。マイナスになっているのは IN(-) のほうが電圧が高いことを示します。
データシートの値 (絶対値) は 2.9mV ですので、異常な数値ではないのだろうと思います。が、増幅して 161mV はちょっとねぇ。

入力バイアス電流・入力オフセット電流

入力バイアス電流や入力オフセット電流を測定しようと思っても、測定する手段、ないです。
単純に考えれば入力端子 IN(+) と IN(-) の電圧を測ってみればいいわけですが、実際に測ってみてもほぼバイアス電圧と同じで、測定誤差としか思えない電圧しか出てこないです。

なので、次のような式から考えてみようと思います。

VO = GV・VI + GV・RS・IB+ - RF・IB-

この式は、出力電圧 VO が入力バイアス電流 IB+、IB- によって影響を受け、オフセット電圧が生じることを示しています。ここで、入力オフセット電流が 0 (IB+=IB-) のとき第2項と第3項が等しくなるようにキャンセル抵抗 RS を決めているのですから、GV・RS = RF になります。入力電圧 VI を 0 とすると、

VO = GV・RS・IB+ - RF・IB- = RF・(IB+ - IB-) より
(IB+ - IB-) = VO / RF

つまり、出力電圧 VO をフィードバック抵抗 RF で割れば、入力バイアス電流の差 (IB+-IB-) になる、はず。

キャンセル抵抗がある場合

図1 の回路で、出力電圧 VO は 27mV でした。フィードバック抵抗 RF は R2=100kΩ です。

(IB+ - IB-) = VO / RF = 27 x 10-3 / (100 x 103) = 0.27 [μA]

非反転入力からバイアス電流 IB+ が流れて出ている。反転入力からは 0.27μA だけ少ない電流 IB- が流れ出ている。その差が 27mV の出力となっている。実際のバイアス電流がどれだけかはわかりませんが、電流差が 0.27μA になっている、そんな状態がみえてきました。

キャンセル抵抗がない場合

図4 の回路では、出力電圧 VO は -161mV、フィードバック抵抗 RF は R2=100KΩ ですので、

(IB+ - IB-) = VO / RF = -161 x10-3 / (100 x 103) = -1.61 [μA]

非反転入力からバイアス電流 IB+ が流れ出ていて、反転入力からは 1.61μA 多い電流 IB- が流れ出ている。その差が -161mV の出力となっている。こちらも同じように、そんなようすがうかがえます。

入力バイアス電流・入力オフセット電流

入力バイアス電流 (Input bias current) とは入力端子から流れ出る、または流れ込む電流のこと。入力オフセット電流 (Input offset current) とは入力端子 IN(+) と IN(-) の入力バイアス電流の差のことです。入力バイアス電流 IB、入力オフセット電流 IIO は、

IB = (IB+ + IB-) / 2
IIO = IB+ - IB-

と定義されます。

なので、キャンセル抵抗ありの場合 IIO=0.27μA、キャンセル抵抗なしの場合 IIO=-1.61μA ってことになったんですけど、これでいいんでしょうか? なんだかちょっと大きな値になっちゃったなぁって感じてます。
入力バイアス電流 IB はバイアス電圧による電流値が不明なのでわからないです。しかし、こうしてみてくると、バイアス電圧の分圧抵抗が 470Ω というのは小さすぎるのではないかなと感じました。クックブックなどをみると電源 12V で分圧抵抗 100KΩ が消費電流とバイアス電流の妥協点なんだとか。次に回路を作るときの参考にしようと思います。

スルーレート

前回、矩形波信号を入力した時に出力波形が台形になっていましたが、これは、入力電圧の変化に対して出力電圧が追従できないからです。この応答の性能がスルーレート (Slew Rate) です。スルーレートは、出力電圧が 10% から 90% に達するまでの電圧差と時間の比で表され、立ち上がりと立ち下がりの遅い方の数値がデータシートに示されます。

1.2KHz 矩形波を入力する

方形波 (1.2KHz) のパルス応答
図6. 方形波 (1.2KHz) のパルス応答

図6 は、ボルテージフォロワ (Unity gain) に 1.2KHz 5V の矩形波を入力 (青) したときの出力波形 (黄) です。出力電圧が 10% (0.5V) から 90% (4.5V) に立ち上がるときの電圧変化を ΔV、時間を ΔTr とすると、立ち上がりのスルーレート SRr は、

SRr = ΔV / ΔTr = 4 / 20 = 0.2 [V/μs]

となりました。立ち下がりも測らなければならないのですが、サボってます。

また、入力の立ち上がりから出力が立ち上がり始めるまでに 5μs ほどの遅れがあります。これは出力段が 0V 付近では動作しないためではないかと思います。この遅れもスルーレートも入力信号の周波数には無関係ですので、この時間の傾きより大きな変化のある入力信号には追従できません。

19.2KHz 矩形波を入力する

方形波 (19.2KHz) のパルス応答
図7. 方形波 (19.2KHz) のパルス応答

図7 は、19.2KHz 5V の矩形波を入力 (青) したときの出力波形 (黄) です。
19.2KHz のパルス幅は 26[μs] ですので、出力電圧が立ち上がる時間とほぼ同じです。なので、出力波形は三角波のようになってしまいました。
0V 付近の動作しない領域の影響も大きくなっています。

どうやらオペアンプ LM358 は、せいぜい数KHz 以下の矩形波信号でないと出力できないようです。このあたりは、周波数特性とあわせて、あらためて確認してみたいです。

その他の電気的特性

その他の電気的特性のうち、主なものについてメモしておきます。

同相入力電圧

同相入力電圧 (Input voltage renge) は、オペアンプに入力してよい電圧の範囲。LM358 は 0 ~ VCC-1.5V となっており、単電源動作のために 0V から入力できるようになっていますが、0V 付近では出力段が動作しません。また、この電圧範囲を超えると出力が飽和します。
最大定格の入力電圧は -0.3 ~ 32V で、VEEより低い電圧を入力すると壊れます。32V まで入力できますが、あくまでも最大定格ですので、電気的特性の同相入力電圧を超える範囲では正常に動作しません。

電源電流

電源電流 (Supply current) は、無信号入力で出力電流も流れていないときに VCC から VEE へ流れる電流。小さいほうが発熱が少なくなります。

大信号電圧利得

大信号電圧利得 (Large signal voltage gain) は、フィードバックをかけていない状態での利得、オープンループ利得 AV です。LM358 のデータシートには 100V/mVと書かれていますが、100000倍 (100dB) ってことです。
抵抗比から求めるクローズドループ利得 GV は AV が無限大のときの計算値ですので、AV が小さければ利得誤差が生じます。また、利得は周波数に依存し、入力信号周波数が高くなると減衰します。

最大出力電圧

最大出力電圧 (Output voltage swing) は、出力可能な最大電圧の範囲です。LM358 では、条件によって変わりますが、出力電圧の HIGH レベルは VCC-2V から VCC-1.5V ぐらいのようです。LM358 のような単電源動作を想定したオペアンプでは、出力電圧 LOW ができるだけ VEE に近づくようになっています。が、完全に VEE (0V) とはなりません。

同相入力信号除去比

同相入力信号除去比 (CMRR : Common-mode rejection ratio) は、IN(+) と IN(-) に同相信号を入力したときの入力オフセット電圧の変化で、同相信号入力の出力への漏れを表します。
LM358 では 80dB となっていますので、5V の同相電圧を入力すると入力オフセット電圧は 0.5mV 増加します。

電源電圧除去比

電源電圧除去比 (PSRR : Power supply rejection ratio) は、電源電圧が変化したときの入力オフセット電圧の変化で、電源電圧変動の出力への漏れを表します。SVRR (Suply voltage rejection ratio) と表記されることもあります。
LM358 では 100dB となっていますので、電源電圧が 1V 変動すると入力オフセット電圧は 0.01mV 増加します。

後記

今回は、オペアンプの電気的特性、主に入力オフセット電圧やスルーレートについて調べてみながら測定などしてみました。これが正確な測定だとか確かな理解だとか、まったくあてになりません。でもなにか、電気的特性というものの雰囲気は知れたような気がしますので、目的は達成できたかな、と思ってます。

で、今回は周波数特性について調べてないのですが、これは次にちょっと確認してみたいです。

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