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エミッタ接地増幅回路でスピーカーを鳴らす

オペアンプの低周波増幅回路の出力をさらに増幅して、小さなスピーカーを鳴らしてみたいと思います。

前回は、汎用オペアンプ LM358 を使って低周波増幅器を作ってみました。

でも、オペアンプの出力ではスピーカーを鳴らすだけのパワーがありませんので、その出力をトランジスタでさらに増幅します。トランジスタによる増幅回路は、以前、勉強したことがあります。以下からの一連の記事を参照ください。

エミッタ接地回路について

小型スピーカー
図1. 小型スピーカー

今回鳴らしてみようと思っているのは、ジャンク箱にあった小型スピーカーです (図1)。たしか液晶ディスプレイの内蔵スピーカーだったような。ちょっとした電子工作に使えるんじゃないかと、ジャンク箱に入れてあったものです。
直径は 28mm、インピーダンスが 8Ω で許容入力は 0.5W。メーカーサイトを見てもこの品番はありませんでしたが、同等クラスのスピーカーの周波数特性は 400~5000Hz といったところです。

エミッタ接地スピーカー駆動回路
図2. エミッタ接地スピーカー駆動回路

図2 は、ときに電子工作でみかけるごく簡単なスピーカー駆動回路です。
小型スピーカーのインピーダンスはほぼコイルの直流抵抗分なので、テスターで測ると 8Ω なんですね。だからこの回路ではコレクタ抵抗が 8Ω ということ。
でも、電源電圧が 5V でコレクタ電圧を 2.5V にしようとすると 300mA 以上のコレクタ電流が必要になってしまいます。スピーカーにそんな大きな直流電流は流せません。

仮にコレクタ電流を 50mA とすると、スピーカーの両端の最大電圧は 0.4V なので出力電圧は 0.28V、電力にすると 10mW。小さな音で鳴る程度の出力ですが、このあたりが限界。古典的なラジオ製作なら、出力を大きくするために出力トランスを使うわけですが、部品箱にないし、まぁいろいろ面倒くさい。

直流をカットしたスピーカー駆動回路
図3. 直流をカットしたスピーカー駆動回路

そこで、図3 のようなスピーカーを負荷抵抗としてつないだ回路を考えます。これもよく見る回路。出力コンデンサがあるのでスピーカーに直流電流は流れません。

コレクタ電流を 100mA としてみましょう。電源電圧 5V、コレクタ電圧 2.5V とするとコレクタ抵抗は 25Ω。コレクタ抵抗とスピーカーは等価的に並列接続です。信号出力電流は 100/√2=71mA なので、出力電圧は 0.071/(1/20+1/8)=0.4V、電力は 20mW。なんとか鳴りそうな、成りそうな感じです。

ちなみに、この回路はスピーカーを電流駆動します。一般にスピーカーは電圧駆動するものだそうですが、こんな小型のスピーカーではどっちでもいい、らしいです。オーディオのことはよくわかりませんが。

回路図と各定数の計算

ということで、図4 のような回路図を描いてみました。

エミッタ接地回路によるスピーカー駆動回路図
図4. エミッタ接地回路によるスピーカー駆動回路図

トランジスタは 2SC1815 (60V150mA) ではコレクタ電流が足りませんので、2SC2120 (35V0.8A) を使うことにしました。コレクタ電流を少し増やすためにコレクタ抵抗を 20Ω として計算してみます。20Ω ぐらいの抵抗って部品箱にないのですが、実験なので 100Ω を 5本並列にすればいいです。

電源電圧 VCC は 5V です。2SC2120 のコレクタエミッタ飽和電圧 VCEsat を 0.5V とすると、コレクタ電圧 VCE は、

VCE = (VCC+VCEsat)/2 = (5 + 0.5) / 2 = 2.75 [V]

コレクタ抵抗 RC の両端電圧 VRC は 2.25V になりますから、コレクタ電流 IC は、

IC = VRC/RC = 2.25 / 20 = 113 [mA]

このときのコレクタ損失 PC は、

PC = VCE・IC = 2.75 x 113 = 311 [mW]

2SC2120 のコレクタ損失は 600mW (@25℃) なので問題ないでしょう。
カットオフ周波数 fC を 50Hz、負荷抵抗 RL をスピーカーの 8Ω とすると、出力コンデンサ CO の容量は、

CO = 1/(2πf・RL) = 1 / (2π x 50 x 8) = 398 [μF]

でかい。まぁ 50Hz ではこのスピーカーは鳴らんだろうし、とりあえず 470μF にしときます。
ベースエミッタ間抵抗 RBE はなんとなく10KΩ。ベース電圧 VBE を 0.7V とすると流れる電流 IRBE

IRBE = VBE/RBE = 0.7 / 10 = 0.07 [mA]

直流電流増幅率 hFE を 250 とするとベース電流 IB は、

IB = IC/hFE = 113 / 250 = 0.45 [mA]

オペアンプの出力バイアス電圧 VB が 1.60V なので、これをベースバイアスとして利用しましょう。
ベース抵抗 RB は、

RB = (VB-VBE)/(IB+IRBE) = (1.6 - 0.7) / (0.45 + 0.07) = 1.73 [KΩ]

ベース電流を調整するために 5KΩ のボリュームとし、ベースの保護のために100Ω を直列に入れました。オペアンプまわりは前回と同じです。出力バイアス抵抗 3.3KΩ はなくても影響なかったのですが、動作点を定めるためにそのまま入れてあります。

とまぁ、毎度の俺的テキトーな計算で各定数が決まりました。

直流動作点の計算

作った増幅回路に、ツインT形発振回路 (前回記事参照) から正弦波信号を入力してみました。

回路図 (図4) に直流動作点の実測値を記入 (プローブのマーク) してあります。
電源電圧 VCC は 5.03V です。ボリューム RV2 でベース電流を調整し、コレクタ電圧 VCE が 2.74V になっています。コレクタ抵抗 RC は 20Ω なのでコレクタ電流 IC は、

IC = (VCC-VC)/RC = (5.03 - 2.74) / 20 = 115 [mA]

コレクタ損失 PC は、

Pc = VCE・IC = 2.74 x 115 = 315 [mW]

トランジスタに触れてみても熱くはなっていませんでした。
ベース電圧 VBE は 0.67V で、ベースエミッタ間抵抗 RBE に流れる電流 IRBE は、

IRBE = VBE/RBE = 0.67 / 10 = 0.067 [mA]

調整後の RV2 の抵抗値は 1.98KΩ でしたので R6 の 100Ω と合わせてベース抵抗 RB は 2.08KΩ です。RB に流れる電流 IRB は、

IRB = (VB-VBE)/RB = (1.60 - 0.67) / 2.08 = 0.447 [mA]

したがってベース電流 IB は、

IB = IRB-IRBE = 0.447 - 0.067 = 0.38 [mA]

直流電流増幅率 hFE は、

hFE = IC/IB = 115 / 0.38 = 303

となりました。なお、データシートによると 2SC2120 Yランクの hFE は 160~320 です。
hFE が想定より大きくてベース電流が減りましたが、だいたい設計通りになっています。

正弦波信号の計算

正弦波信号 (交流分) に関する計算をしてみます。等価回路を図5 に示します。

エミッタ接地回路の等価回路図
図5. エミッタ接地回路の等価回路図

前回の測定で、オペアンプの信号出力電圧は 0.55V でした。最大値にすると vi=0.55x√2=0.78V です。オペアンプの出力インピーダンス Zop を 0Ω とし、R5 を無視します。
トランジスタのベース入力インピーダンス hie は、コレクタ電流 IC が 115mA なので、

hie = hFE・(0.026/IC) = 303 x (0.026 / 0.115) = 68.5 [Ω]

大信号でベース抵抗 RB が大きいので hie を 0Ω としてしまいましょう。したがって RBE も無視します。
入力電圧 vi が 0.78V ですからベース電流 ib は、

ib = vi/RB = 0.78 / 2.08 = 0.375 [mA]

したがってコレクタ電流 ic は、hFE=hfe として、

ic = hfe・ib = 303 x 0.375 = 114 [mA]

コレクタの動作点の電流におさまるのでクリップしないでしょう。実際には RBE にも電流が流れるのでこれより小さな値になります。
コレクタ抵抗 RC とスピーカー RL は等価的に並列接続されていますので、スピーカーにかかる電圧 vo は、

vo = ic/(1/RC+1/RL) = 0.114 / (1/20 + 1/8) = 0.65 [V]

これは最大値で、実効値 vor は 0.65/√2=0.46V です。出力電力 PS は、

PS = vor2/RL = 0.462 / 8 = 26 [mW]

となります。スピーカー電圧の実測値は 0.41V、出力は 21mW でした (図6) ので、ほぼ計算通りです。
ちなみに、エミッタ接地回路の出力インピーダンスは RC に等しく 20Ω です。

入出力波形

スピーカー出力電圧波形 1000Hz
図6. スピーカー出力電圧波形 1000Hz

図6 は、1000Hz での入出力波形です。
入力 (青) はオペアンプの入力電圧で 100mV、出力 (黄) はスピーカーにかかる電圧 vor で 0.41V でした。出力 PS は、

PS = vo2/ RL = 0.412 / 8 = 21 [mW] 

で、そこそこにうるさいです。歪は感じないですが、俺の耳はあてにはなりません。なお、エミッタ接地回路の出力は、入力と逆相になります。

スピーカー出力電圧波形 50Hz
図7. スピーカー出力電圧波形 50Hz

図7 は、50Hz 時の入出力波形です。
出力電圧が 0.36V で出力は 16mW に減少しています。位相が少し進んでいます。
スピーカーはたしかに振動していますが、俺の耳にはほとんど聞こえません。このスピーカーで低い音は無理ですよねぇ、耳のせいではないですよねぇ。

スピーカー出力電圧波形 7000Hz
図8. スピーカー出力電圧波形 7000Hz

図8 は、7000Hz 時の入出力波形です。
ここでの出力は 0.34V、14mW でした。位相は少し遅れています。
キーという高い音がかなりきついです。年寄りの耳ですが、これはまだまだ聞こえました。ちなみに耳鼻科での聴力検査では「年相応です」と言われてます。

後記

今回は、オペアンプ増幅回路の出力をエミッタ接地回路に入れて、小型スピーカーを駆動してみました。

スピーカーはむき出しではちゃんと鳴りませんから、小さな箱をスピーカーボックスにしてみました。そしてパソコンからの音声出力を入れてみると、おお!いい感じ。安物のトランジスタラジオのようですが、なかなかに聞こえてくるじゃないですか。
ということでスピーカーを鳴らすことができましたが、以前やったトランジスタ増幅回路の勉強 (過去記事) がけっこう役に立ちましたね。相変わらずのいい加減さだとは思いますけど、ちょっとは進歩したんじゃないでしょーか。

ところで、エミッタ接地回路は電流源だからスピーカーを電流駆動する。対して、エミッタフォロワ回路は電圧源だから電圧駆動する、はず? 正確じゃないかもしれないけれど、いまのところそんな感じに理解しています。なので次は、エミッタフォロワでスピーカーを電圧駆動してみましょう。

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