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アナログ回路 / エミッタ接地増幅回路の基本動作

アナログ回路というと、なんだかむずかしい。増幅回路も、わかるようなわからんような。
そこで、増幅回路についてあらためて勉強してみようと思います。むずかしい理論は教科書みてください。ここでは、俺が電子工作でかんたんに遊べる程度の、おさらいをしていきます。

今回は、バイポーラトランジスタによるエミッタ接地増幅回路について、基本的な動作を確認してみます。

エミッタ接地回路

いろいろな回路には、入力と出力があります。トランジスタのような 3端子の素子の場合、入力端子と出力端子、もう一つは入力と出力の共通の端子です。
エミッタ接地回路は、エミッタを共通の端子とした回路。そして、ベースが入力端子、コレクタが出力端子となっています。

エミッタ接地回路の動作

図1. エミッタ接地回路

図1 は、よくみかける基本的な、トランジスタのエミッタ接地回路です。動作は、次のとおりです。

  1. ベースエミッタ間電圧 VBE が約 0.6V になると、ベース電流 IB が流れ、トランジスタがオンする。
  2. トランジスタがオンすると、電源電圧 VCC からコレクタ電流 IC が流れる。
  3. コレクタ電流 IC が流れると、コレクタ負荷抵抗 RC により IC x RC だけ電圧降下する。
  4. 出力電圧 VOUT は、電源電圧 VCC から コレクタ負荷抵抗 RC による電圧降下分 IC x RC を引いた値 VCC – IC x RC になる。
  5. エミッタ電流 IE は、コレクタ電流とベース電流の和 IC + IB となる。

ベース電流 IB とコレクタ電流 IC

図2. 2SC1815 IB – VBE 特性グラフ

実験で使っているトランジスタ 2SC1815GR のデータシートから、ベースエミッタ間電圧 VBE とベース電流 IB の関係を示す特性グラフ (図2) をみてみましょう。

ベースエミッタ間電圧 VBE が 0.6V のとき、ベース電流 IB は約 4μA 流れます。(Ta=25℃)

2SC1815GR の直流電流増幅率 hFE は、データシートによると GRランクで 200~400 です。この値はトランジスタ固有のもの。じっさいに使っているトランジスタをテスタで測ってみると、約 260 でした。

コレクタ電流 IC は、ベース電流 IB の直流電流増幅率 hFE 倍になるので、コレクタ電流 IC = 4μA x 260 = 1.04mA。コレクタ負荷抵抗 RC を 2.2KΩとすると、電圧降下 VRC は、

VRC = IC x RC = 1.04 x 10-3 x 2.2 x 103 = 2.29 [V]

なので、出力電圧 VOUT は、

VOUT = VCC - VRC = 5.0 - 2.29 = 2.71 [V]

になる。はず。

ちなみに、コレクタ負荷抵抗 RC を 2.2KΩにしたのは、出力電圧 VOUT が 電源電圧 VCC のだいたい半分になるからです。
コレクタ電流 IC はベース電流 IB と 直流電流増幅率 hFE とで決まるので、コレクタ負荷抵抗 RC の値を変化させても、コレクタ電流 IC は変化しません。出力電圧 VOUT はコレクタ負荷抵抗 RC で決まります。

回路をつくって確かめてみた

図3. エミッタ接地回路の実験回路

じっさいの回路 (図3) で、試してみましょう。

ベースに流す電流は、電源からベース抵抗 RB をとおして供給します。電源電圧 VCC を5V、ベースエミッタ間電圧 VBE を0.6V、ベース電流 IB を 4μAとしたとき、ベース抵抗 RB は、

RB = (VCC - VBE) / IB
   = (5 - 0.6) / (4 x 10-6) = 1.1 x 106 = 1.1 [MΩ]

なので、1MΩとしました。

各部の電圧は、テスタによる実測値です。電源電圧 VCC = 5.06V、ベースエミッタ間電圧 VBE = 0.64V、出力電圧 VOUT はコレクタエミッタ間電圧に等しく VOUT = VCE = 2.66Vでした。

ベース電流 IB は、

IB = (VCC - VBE) / RB = (5.06 - 0.64) / (1 x 106) = 4.4 x 10-6 = 4.4 [μA]

コレクタ電流 IC は、

IC = (VCC - VCE) / RC = (5.06 - 2.66) / (2.2 x 103) = 1.09 x 10-3 = 1.09 [mA]

になります。
直流電流増幅率 hFE を逆算してみると、

hFE = IC / IB = (1.09 x 10-3) / (4.4 x 10-6) = 248

になりました。

だいたい、計算どおりですね。

「増幅」ということ

増幅回路ってなんでしょう。入力した信号が、何らかの形で大きくなって出力される回路、ということでしょう。
じゃ、上で試してみたエミッタ接地回路では、何か「増幅」されたんでしょうか? いいえ、この状態では、なにも起きません。ただ単に電流が流れているだけ。この状態を「動作点」といいます。

ベース電圧を変化させてみる

変更前変更後増減
RB1MΩ680KΩ
VBE0.64V0.67V+0.03V
VCE2.66V0.07V-2.59V
AV-86
図4. 電圧増幅率

ベース抵抗 RB を 1MΩ から 680KΩ に替えてみました。すると、ベースエミッタ間電圧 VBE が 0.64V から 0.67V に、コレクタエミッタ間電圧 VCE が 2.66V から 0.07V に変化しました。

コレクタエミッタ間電圧 VCE の変化量 ΔVCE と、ベースエミッタ間電圧 VBE の変化量 ΔVBE の比は、

AV = ΔVCE / ΔVBE = (0.07 - 2.66) / (0.67 - 0.64) = -86

これは、ベースエミッタ間電圧 VBE の変化が 86倍されて、コレクタエミッタ間電圧 VCE の変化として出力された、すなわち「増幅」された、ということ。値がマイナスになっているのは、入力と出力の変化の方向が逆になっている、ということです。

この値を電圧増幅率 AV といいます。

電流値で比較してみましょう。
ベース抵抗 RB を 1MΩ → 680KΩにしたとき、ベース電流 IB は 4.4μA → 6.5μA (*1)、コレクタ電流 IC は 1.09mA → 2.27mA (*2) と変化しました。

(*1) IB = (VCC – VBE) / RB = (5.06 – 0.67) / (680 x 103) = 0.0065 x 10-3 = 6.5 [μA]
(*2) IC = (VCC – VCE) / RC = (5.06 – 0.07) / (2.2 x 103) = 2.27 x 10-3 = 2.27 [mA]

それぞれの変化量 ΔIC と ΔIB の比は、

β = ΔIC / ΔIB = {(2.27 - 1.09) x 10-3} / {(6.5 - 4.4) x 10-6} = 562

つまり、ベース電流 IB の変化が 562倍に「増幅」されて、コレクタ電流 IC の変化として現れました。
これを電流増幅率 β (*3) といいます。

(*3) 電流増幅率 β とは、エミッタ接地回路の電流の比率 ΔIC/ΔIB です。電流増幅率には α というのもあって、こちらはベース接地回路の電流の比率 ΔIC/ΔIE です。どちらも、信号の変化の比率。
直流電流増幅率 hFE はベース電流とコレクタ電流の比率 IC/IB で、トランジスタ固有のパラメータ。hfe というパラメータもあって、こちらはエミッタ接地回路での信号の変化に対する電流の比率で、β と同じと考えていい。
あ〜ややこしい。

増幅回路とは、入力信号を変化させたときに、その変化の割合いが大きくなって出力に現れる、そんな回路なのです。

インピーダンスってなに?

エミッタ接地回路は、入力インピーダンスが低い (小さい)、などと言われますけど、入力インピーダンスってなんでしょ?
大雑把にいうと、ある回路を入力側からみたときの回路の抵抗値。だから、入力インピーダンスが低いと、回路に流れ込む電流が大きくなる、ってこと。センサなどの出力信号が微弱で充分な電流が取れないとき、入力インピーダンスが低いと、センサ信号がでなくなっちゃったりする。

図3 の回路の入力インピーダンス ZIN は、入力電圧の変化量 ΔVBE を入力電流の変化量 ΔIB で割った値になります。

ZIN = ΔVBE / ΔIB = (0.67 - 0.64) / {(6.5 - 4.4) x 10-6} = 14.3 x 103 = 14.3 [KΩ]

同様に、出力インピーダンスとは、出力側からみたときの回路の抵抗値。出力インピーダンスが高い (大きい) と、大きな電流を取り出そうとすると出力電圧が下がってしまいます。

エミッタ接地回路の出力インピーダンス ZOUT は、コレクタ負荷抵抗 RC と同じになります。
なぜなのか? 簡単にいうと、トランジスタのコレクタエミッタ間は電流源であり、インピーダンスが非常に大きいと考えることができるから。うーん、簡単じゃないか (;´Д`)

ZOUT = RC = 2.2 [KΩ]

むずかしい話はおいといて、まぁ、こんなようなことだと思っておきましょう。

後記

トランジスタ増幅回路の教科書などをみていると、気が滅入ります。
基本回路として図1 のような回路があって、バイアスだ動作点だインピーダンスだと説明されてある。ところが、じっさいのトランジスタアンプの回路図をみると、トランジスタのまわりに抵抗やコンデンサがいくつもついていて、とても基本回路と同じものだとは思えない。増幅回路って、なんだかわけわかんない。

でも今回、じっさいに動かしてみて再確認できたことがあります。それは「コレクタ電流はベース電流で決まる」ってこと。
そんなん IC – VCE 特性グラフとかみりゃわかるだろーが。いやぁ、スイッチング回路ばかり使っているせいなのかなぁ、どうして VCE が変化しても IC が変化しないのか、それがわからなかった。でも、いまやっとわかったです (;´Д`)

なので次は、バイアスだ動作点だについて、もう少し勉強してみようと思います。

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