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アナログ回路 / エミッタ接地増幅回路の出力の歪み

アナログ回路というと、なんだかむずかしい。増幅回路も、わかるようなわからんような。
そこで、増幅回路についてあらためて勉強してみようと思います。むずかしい理論は教科書みてください。ここでは、俺が電子工作でかんたんに遊べる程度のことをやっていきます。

前回までに、エミッタ接地増幅回路 (交流帰還なし) をつくり、増幅動作を確認できました。が、出力波形がすこし歪んでいるようです。

今回は、この歪みの原因を調べ、改善する方法を考えてみたいと思います。

出力波形の歪みと原因

図1. 実験回路の動作点

図1 は、実験しているエミッタ接地増幅回路の動作点の状態です。
エミッタバイパスコンデンサがありませんが、あってもなくても、直流の動作点には影響はないです。

使っているトランジスタ 2SC1815GR の電流増幅率 hFE は 248 (実測値) ですので、ベース電流 IB は 3.7μA です。小さな値ですので、回路の計算上は 0 とみなしてきました。
ベースエミッタ間電圧 VBE = 0.61V、コレクタエミッタ間電圧 VCE = 2.11V となっています。

図2. 出力波形 (山の部分が潰れている)

図2 が、正弦波を入力したときの出力波形です。山の部分が、少し潰れているのがわかります。

山の部分が潰れる。
もっとも考えられるのは、コレクタ電圧の動作点から電源電圧までの余裕がないこと。

コレクタ電圧 VOUT は 3.03V で、電源電圧 VCC が 5.06V、差は 2.03V です。信号の出力電圧 vo は 3Vp-p (±1.5V) ですから、余裕はまだあるように思えます。それに、出力電圧を少し下げてみても、あまり改善しません。

が、出力電圧を 1Vp-p ぐらいまで下げると、良くなってきました。
出力電圧を下げて歪が改善する、ということは、直線性が悪い、ってこと?

図3. 2SC1815 VCE – VBE 特性グラフ (実測値)

2SC1815GR の、コレクタエミッタ間電圧 VCE とベースエミッタ間電圧 VBE の特性を測ってみました (図3)。電源電圧 5.06V、コレクタ負荷抵抗 2.2KΩ で測っています。

現在の VBE は 0.61V。グラフでみると、直線性、ないです。直線の領域にするには 0.65V にしないといけないですね。
このグラフがあてになるとは思わないですが、すくなくとも VBE をもっと高くしないといけないことは、間違いなさそう。

図4. 2SC1815 IB – VBE 特性グラフ

データシートの IB – VBE 特性グラフをみてみましょう。 (図4)
VBE を 0.65V にすると IB は 30μA になります。とすると、直流電流増幅率 hFE = 248 でしたから、コレクタ電流 IC は 7.4mA です。

コレクタ電流を 8倍に増やしたら、波形の歪みはなくなるのでしょうか?

やってみましょう。

各部の計算

コレクタ電流 IC を 7.4mA として、各部の定数を計算していきます。

動作点

エミッタ電圧 VE は少し低くても問題なさそうなので、エミッタ抵抗 RE を 100Ω として、

VE = IC x RE = 7.4 x 10-3 x 100 = 0.74 [V]

ベースエミッタ間電圧 VBE を 0.65V とするので、ベース電圧 VB は 1.39V。ブリーダ抵抗に流す電流 IRB は、ベース電流の 10倍として 0.3mA。ブリーダ抵抗 RB1、RB2 は、

RB1 = (VCC - VB) / IRB = (5.06 - 1.39) / (0.3 x 10-3) = 12 x 103 = 12 [KΩ]
RB2 = VB / IRB = 1.39 / (0.3 x 10-3) = 4.6 x 103 = 4.6 [KΩ]

ここは、回路をつくるときにボリューム入れて、調整できるようにしようと思います。
コレクタ電圧 VOUT を 3V とすると、コレクタ負荷抵抗 RC は、

RC = (VCC - VOUT) / IC = (5.06 - 3) / (7.4 x 10-3) = 278 [Ω]

E6系列から 330Ω とします。

入力インピーダンス

直流電流増幅率 hFE = 248、コレクタ電流 IC = 7.4mA としたとき、ベースのインピーダンス Zb は、

Zb = hFE x (RE + 0.026 / IC)
   = 248 x { 0 + 0.026 / (7.4 x 10-3) } = 0.87 x 103 = 0.87 [KΩ]

交流帰還なしとしますので、RE = 0Ω です。
回路の入力インピーダンス Zin は、

Zin = 1 / { (1 / RB1) + (1 / RB2) + (1 / Zb) }
    = 1 / { (1 / 12) + (1 / 4.6) + (1 / 0.87) } = 0.69 [KΩ]

うう、ほんまに低いですねぇ。

電圧増幅率

コレクタ負荷抵抗 RC = 330Ω、コレクタ電流 IC = 7.4mA として、電圧増幅率 Av は、

Av = RC / (RE + 0.026 / IC)
   = 330 / { 0 + (0.026 / (7.4 x 10-3) } = 94 

入力コンデンサ

カットオフ周波数 fc を 50Hz とすると、入力コンデンサ Ci

Ci = 1 / (2π x fc x Zin) = 1 / (2 x 3.14 x 50 x 0.69 x 103) = 4.6 x 10-6 = 4.6 [μF]

なので、10μF とします。

エミッタバイパスコンデンサ

同じく、カットオフ周波数 fc を 50Hz とすると、

CE = IC / (2π x fc x 0.026)
    = 7.4 x 10-3 / (2 x 3.14 x 50 x 0.026) = 0.91 x 10-3 = 0.91 [mF]

うぅ、でかい。
部品箱に 1mF (1000μF) があったので、そいつを使おうと思いますけど、周波数 1KHz での実験なら 470μF でも問題ないです。しかし、エミッタバイパスコンデンサって大きな容量になるんですねぇ。いまではこうした回路が使われなくなっているってのが、わかる気がします。

実験回路図

実験回路図 (図5) です。

図5. エミッタ接地増幅回路 (交流帰還なし) 実験回路図 改良版

増幅回路の入力インピーダンスが低いので、発振回路への影響を避けるためにバッファを入れました。ジャンク箱にあった LMV324 というオペアンプで、5V 単電源のレールツーレールタイプです。やっぱオペアンプって便利ねぇ (^_^;)

入力信号は、出力信号電圧が 3Vp-p になるように調整します。
ブリーダ抵抗は、RB1 を 10KΩ 抵抗器、RB2 を 10KΩ のボリュームとしています。出力波形がもっともきれいになるように調整します。

各部の実測値

電圧測定値は、ベース電圧 VB = 1.37V、エミッタ電圧 VE = 0.68V で、ベースエミッタ間電圧 VBE = 0.69V になりました。また、コレクタ電圧 VOUT = 2.78V、電源電圧 VCC = 5.06V です。

コレクタ電流 IC を、エミッタ側とコレクタ側から計算すると、

IC = VE / RE = 0.68 / 100 = 6.8 x 10-3 = 6.8 [mA]
IC = (VCC - VOUT) / RC = (5.06 - 2.78) / 330 = 6.9 x10-3 = 6.9 [mA]

ちょっと誤差がありますが、IC = 6.9mA としましょう。
ベース電流 IB は、

IB = IC / hFE = 6.9 x 10-3 / 248 = 0.028 x 10-3 = 0.028 [mA]

ブリーダ抵抗に流れる電流 IRB と、RB2 の抵抗値は、

IRB = (VCC - VB) / RB1 = (5.06 - 1.37) / (10 x 103) = 0.37 x 10-3 = 0.37 [mA]
RB2 = VB / IRB = 1.37 / (0.37 x 10-3) = 3.7 x 103 = 3.7 [KΩ]

入力インピーダンス Zin は、

Zb = hFE x (RE + 0.026 / IC)
   = 248 x { 0 + 0.026 / (6.9 x 10-3) } = 0.93 x 103 = 0.93 [KΩ]
Zin = 1 / { (1/ RB1) + (1 / RB2) + (1 / Zb) }
    = 1 / { (1 / 10) + (1 / 3.7) + (1 / 0.93) } = 0.69 [KΩ]

実測値は 1.3KΩ でしたが、これは測定誤差が大きいと思います。でも、どちらにしてもかなり低い。

正弦波信号の入力電圧 vi は 60mVp-p、出力電圧 vo は 3.0Vp-p です。電圧増幅率 Av は、

Av = vo / vi = 3.0 / (60 x 10-3) = 50 

計算よりも小さくなりました。誤差やら温度変化やら、いろいろあるんでしょうね、きっと。

後記

図6. 改善した出力波形

図6 が、出力波形です。まぁまぁ、とりあえず、改善してるんじゃないでしょーか。

ベース電圧をボリュームで調整してますが、けっこうシビアです。山の波形を良くすると谷が潰れる。谷を良くすると山が潰れる。これは、出力電圧を下げても同様でした。
それほどに、動作点をどこに定めるかが重要、ってことですか。

電源 5V で、目一杯に出力しているのも直線性を悪くする原因かもしれないです。動作点で小さく動かせば、直線性はよくなりますよね。
じっさい、出力電圧を 1/10 の 0.3Vp-p とかにすると、けっこういい感じにみえますから。

そんなこんなで、エミッタ接地増幅回路について勉強してきました。オーディオアンプとかいいだすともっともっと奥が深いんでしょうけど、いまの俺が、ちょこっと信号を増幅してみたりするには十分だと思います。

ところで、発振回路と増幅回路のインピーダンスを合わせるためにオペアンプを使ってしまいましたが、そこ、エミッタフォロワ回路でいけませんか? エミッタフォロワ (コレクタ接地) 回路も勉強して、確かめないといけないですよ、ねぇ。

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