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オペアンプで低周波を増幅してみた

今回は、汎用オペアンプ LM358 で低周波信号を増幅してみます。

前回は、温度センサー LM61C からのアナログ信号を Arduino UNO (R3) に入力するための直流増幅回路を作ってみました。直流信号の増幅はそれなりにうまくできたと思います。

また、前々回の矩形波信号の増幅では、LM358 でも低周波増幅ができそうな感じでした。なので、今回は低周波増幅回路を作ってみようと思います。

低周波増幅回路図

LM358 による低周波信号の増幅を試してみますが、いわゆるオーディオアンプといった音質の良い増幅器は考えていません。無線機にでも使えそうな電話音質の低周波増幅器を作ってみます。周波数帯域は 50~7000Hz としておきましょう。

LM358 は単電源動作とします。電源電圧を 5V とすると最大出力電圧は 3.5V ですので、バイアス電圧は中点の1.75V です。出力電圧を 0.5~3.0V でスイングさせれば、振幅は 2.5VP-P になります。
だいたいこのぐらいと考えておいて、図1 の回路を描いてみました。

低周波増幅回路図
図1. 低周波増幅回路図

R11、R12 がバイアス電圧の分圧抵抗です。電源電圧 VCC=5V とするとバイアス電圧 VB は、

VB = VCC・R11/(R11+R12) = 5 x 47 / (47 + 100) = 1.60 [V]

出力電圧を 2.50VP-P とすると最大電圧 2.85V、最小電圧 0.35V なので問題ないでしょう。
入力インピーダンス Zi は、ボリューム RV11 と分圧抵抗 R11、R12 の並列値ですから、

Zi = RV11//R11//R12 = 1 / (1/33 + 1/47 + 1/100) = 16.2 [KΩ]

入力インピーダンスを高くするためにボリュームをもう少し大きな抵抗値にしたかったのですが、部品箱にあったのが 33KΩ でした。まぁ問題はないです。
非反転増幅回路ですので、クローズドループ利得 GV は、

GV = 1+R14/R13 = 1 + 100 / 22 = 5.5

出力をフルスイングさせるには入力電圧が 0.45VP-P (0.16Vrms) 必要になります。
入力コンデンサ C11 は R11、R12 とハイパスフィルタを形成します。カットオフ周波数 fC を 50Hz とすると、

R = R11//R12 = 47 x 100 / (47 + 100) = 32.0 [KΩ]
C11 = 1/(2πfC・R) = 1 / (2π x 50 x 32.0 x 103) = 0.10 [μF]

なので、0.22μF とします。カットオフ周波数 fC11 は、

fC11 = 1/(2π・R・C11) = 1 / (2π x 32.0 x 103 x 0.22 x 10-6) = 22.6 [Hz]

C12 は R13 とハイパスフィルタを形成します。また、C12 のリアクタンスは R13 より十分小さくします。カットオフ周波数 fC12 とリアクタンス XC12 は、

fC12 = 1/(2π・R13・C12) = 1 / (2π x 22 x 103 x 2.2 x 10-6) = 3.3 [Hz]
XC12 = 1/(2πf・C12) = 1 / (2π x 50 x 2.2 x 10-6) = 1.4 [KΩ]

低音帯域は C11 で決まりますので、ここは fC11 の 1/10 ほどとしておきます。
C13 はオペアンプの動作を安定させるために入れます。また、R14 とローパスフィルタを形成し高音帯域を制限します。カットオフ周波数 fC13 は、

fC13 = 1/(2π・R14・C13) = 1 / (2π x 100 x 103 x 100 x 10-12) = 15900 [Hz]

高音帯域を 7000Hz としているので十分ですが、高音帯域を絞りたければ C13 を大きくします。
出力コンデンサ C14 は負荷抵抗 R16 とハイパスフィルタを形成します。カットオフ周波数 fC14 は、

fC14 = 1/(2π・R16・C14) = 1 / (2π x 10 x 103 x 4.7 x 10-6) = 3.4 [Hz]

ここも、fC11 の 1/10 ほどとします。なお R16 は次段の入力インピーダンスを想定しています。

R15 は出力バイアス抵抗で、LM358 ではこれを入れないと出力波形が歪みます。この働きについては後述します。

ツインT形正弦波発振回路

テスト用の正弦波は、毎度のようにツインT形正弦波発振回路 (図2) で発振させました。3つとも同じ回路ですが、定数を変えて 50Hz、1000Hz、7000Hz の正弦波を出力しています。出力電圧は 0.15Vrms ほどです。ツインT形正弦波発振回路については過去記事も参照ください。

ツインT形正弦波発振回路図
図2. ツインT形正弦波発振回路図

バイアス電圧と直流出力波形

直流入出力波形
図3. 直流入出力波形

1000Hz の正弦波を入力 (青) してオペアンプの直流出力 (黄) を確認します。(図3)
バイアス電圧は 1.65V。直流電圧の増幅率は 1 ですので、入力、出力とも同じ電圧です。
出力電圧は最大 2.91V、最小 0.41V で、振幅は 2.50VP-P となっています。このときの入力の振幅は 0.45VP-P で、増幅率 5.6 とほぼ計算どおりになりました。

出力バイアス抵抗 R15 の働き

出力バイアス抵抗がないときの入出力波形
図4. 出力バイアス抵抗がないときの入出力波形

LM358 では出力バイアス抵抗 R15 がないと、図4 のように出力波形が歪みます。これは、LM358 の出力段が B級増幅になっているためのクロスオーバー歪と、VEE 付近でシンク電流が流れずクリップするためのようです。
そこで R15 を入れて常にソース電流を流し、A級増幅として動作させます。そうすることで図3 のような歪みのない出力になります。

負荷抵抗を R15//R16=2.48KΩ、出力電圧振幅を最大 1.25V とすると交流の負荷電流は 0.50mA です。VB=1.6V、R15=3.3KΩ としたとき出力バイアス電流は 0.48mA ですから、少し不足する計算です。カットアンドトライで調整してみると、たしかにこれ以上抵抗を大きくすると歪みがみえてくるようです。
また、負荷抵抗が小さく出力電流が大きくなったときは、出力バイアス電流も大きくする必要があります。

低周波信号の入出力波形

低周波入出力波形 1000Hz
図5. 低周波入出力波形 1000Hz

図5 は 1000Hz の正弦波の入出力波形です。
入力電圧 0.10Vrms 、出力電圧 0.55Vrms 、増幅率は 5.5 です。きれいに増幅されているように思います。
ちなみに実効値 0.55Vrms は最大値 0.78Vmax 、ピークツーピーク値で 1.56Vp-p に相当します。

低周波入出力波形 50Hz
図6. 低周波入出力波形 50Hz

図6 は 50Hz の正弦波の入出力波形です。
入力電圧 0.10Vrms 、出力電圧 0.50Vrms 、増幅率 5.0 です。
出力の位相が 30° ほど進んでいますが、入力コンデンサ C11 が形成するハイパスフィルタの影響のようです。C11 を大きくすると位相差は小さくなります。
ちなみに、オペアンプの入力容量はローパスフィルタになるので位相を遅らせます。

低周波入出力波形 7000Hz
図7. 低周波入出力波形 7000Hz

図7 は 7000Hz の正弦波の入出力波形です。
入力電圧 0.10Vrms 、出力電圧 0.50Vrms 、増幅率 5.0 です。
出力の位相は 20° ほど遅れています。C13 を小さくすると遅れは小さくなります。ローパスフィルタとしての影響だと思われます。
このコンデンサは位相を進める、漠然とそう考えていたのですが少し違うようです。このあたりは教科書をきちんと確認しないといけませんね。

正弦波交流の実効値 Vrms 最大値 Vmax ピークツーピーク値 Vp-p

Vmax = √2・Vrms
Vp-p = 2・Vmax = 2√2・Vrms

後記

今回は、汎用オペアンプ LM358 を使って低周波の増幅をしてみました。思ったより簡単にうまくいった気がします。

作った低周波増幅回路に YouTube から音声信号を入力し、出力を PCスピーカーにつないでみたら、ちゃんと声が聞こえましたよ。なので欲がでちゃいます、スピーカーを駆動できるようにしたいです。ちょっと脇道にそれますが、次は小さなスピーカーを駆動するための増幅器を考えてみましょう。

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