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エミッタフォロワ増幅回路でスピーカーを鳴らす

オペアンプの出力をエミッタフォロワ回路で増幅し、スピーカーを鳴らしてみようと思います。

前回は、汎用オペアンプ LM358 の出力をエミッタ接地回路で増幅して小型スピーカーを鳴らしてみました。結果、21mW の出力を得ることができました。

今回はエミッタフォロワ回路を使ってみます。
ちなみに、エミッタ接地回路はスピーカーを電流駆動しますが、エミッタフォロワ回路では電圧駆動です。一般にスピーカーは電圧駆動するものだそうですからエミッタフォロワが正統派? 小型スピーカーはどちらも同じだそうですが、ネットではよくみる回路です。

トランジスタによるエミッタフォロワ回路について、過去に勉強した記事です。合わせてどうぞ。

エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワ・スピーカー駆動回路
図1. エミッタフォロワ・スピーカー駆動回路

図1 のように信号をエミッタから取り出すエミッタフォロワ (コレクタ接地) 回路では、電圧増幅率が 1 よりも小さいので出力電圧は大きくなりません。が、電流は増やせるので電力の増幅はできます。だからエミッタフォロワ回路でもスピーカーを鳴らすことができる、はず。しかも出力インピーダンスが低いから、スピーカーを電圧駆動するにはもってこい?

おおまかに考えてみましょう。
オペアンプの出力バイアス電圧が 1.60V なので、これをこのままバイアス電圧にします。ベースエミッタ間電圧 0.65V を引くとエミッタ電圧は 0.95V。エミッタ抵抗を 10Ω にすればエミッタ電流は 95mA です。実効値にすると 67mA だからスピーカーにかかる信号電圧は 0.30V、11mW。うーん小さいなぁ。
エミッタ電圧をもっと高くすべきなのでしょうけど、まぁとにかく、やってみましょ。

回路図

ということで描いた回路図が図2 です。

エミッタフォロワ回路によるスピーカー駆動回路図
図2. エミッタフォロワ回路によるスピーカー駆動回路図

オペアンプ部分は変更ありません。出力バイアス抵抗 R5 もそのままつけておきます。R6 は保護抵抗のつもりですが、まぁなんとなく気分です。
トランジスタは 2SC2120 (35V0.8A) です。2SC1815 (60V150mA) ではコレクタ電流が不足しますので使えません。オペアンプの出力バイアス電圧 VB は 1.60V ですので、ベースエミッタ間電圧 VBE を 0.65V とするとエミッタ電圧 VE は 0.95V です。エミッタ抵抗 RE を 10Ω とすると、コレクタ電流 IC は、

IC = VE/RE = 0.95 / 10 = 95 [mA]

出力コンデンサ C4 はスピーカー RL=8Ω とハイパスフィルタを形成します。カットオフ周波数 fC4 は、

fC4 = 1/(2π・C4・RL) = 1 / (2π x 470 x 10-6 x 8) = 42 [Hz]

最低周波数を 50Hz としていますのでもっと大きな容量にしたいところですが、470μF のままにしておきます。使っている小型スピーカーでは低い音は鳴りませんでしょうし。
コレクタ電流が 95mA なので実効出力電流 ior は 95/√2=67mA。スピーカーにかかる信号出力電圧 vor は、

vor = ior/(1/RE+1/RL) = 0.067 / (1/10 + 1/8) = 0.30 [V]

スピーカー出力 PS は、

PS = vor2/RL = 0.302 / 8 = 11 [mW]

です。もっとコレクタ電流を増やしたいところですが、コレクタ損失 PC が、

PC = IC・VCE = 0.095 x (5.0 - 0.95) = 384 [mW]

2SC2120 の最大コレクタ損失は 600mW なのでこれ以上は難しいです。しかもパッケージが TO-92 なので放熱も面倒だし、大きなトランジスタを使う価値があるかってゆーと、ない、でしょ。
コレクタ電流 IC=95mA で直流電流増幅率 hFE を 300 とすると、ベース電流 IB は、

IB = IC/hFE = 0.095 / 300 = 0.32 [mA]

ベースの保護抵抗 R6 として 100Ω を入れたので、電圧降下 VR6 が、

VR6 = IB・R6 = 0.32 x 10-3 x 100 = 0.032 [V]

そのためベース電圧が下がりコレクタ電流が減少、出力も低下してしまいます。が、ここでは無視しておきます。無くしたところで大差ないですから。

ということで、俺的テキトー計算で各定数を決定しました。

直流動作点の計算

回路図 (図2) に直流動作点の実測値を記入 (プローブのマーク) してあります。
オペアンプの出力バイアス電圧 VOB は 1.60V、R6 通過後のベース電圧 VB は 1.57V でした。ベース電流 IB は、

IB = (VOB-VB)/R6 = (1.60 - 1.57) / 100 = 0.30 [mA]

エミッタ電圧 VE が 0.92V、エミッタ抵抗 R7 が 10Ω なので、エミッタ電流 IE は、

IE = VE/RE = 0.92 / 10 = 92 [mA]

直流電流増幅率 hFE は、

hFE = (IE-IB)/IB = (92 - 0.3) / 0.3 = 306

エミッタ接地回路のときとほぼ同じになりました。
電源電圧 VCC は 5.03V でしたので、コレクタ損失 PC は、

PC = (VCC-VE)・(IE-IB) = (5.03 - 0.92) x (92 - 0.3) = 377 [mW]

トランジスタがそこそこに熱くなっていたので、折り曲げた小さなアルミ片で挟んで簡易放熱器にしました。2SC2120 の最大コレクタ損失は 600mW です。短時間の実験で壊れることはないでしょうが、コレクタ損失は定格の半分ぐらいにしておくのが吉です。

正弦波信号の計算

正弦波信号 (交流分) に関する計算をしてみます。図3 に等価回路を示します。

エミッタフォロワ回路の等価回路図
図3. エミッタフォロワ回路の等価回路図

作った増幅回路に、ツインT形発振回路 (前回記事参照) から正弦波信号を入力してみました。

まず、オペアンプの入力電圧ですが、前回のエミッタ接地回路では 100mV 以上入力することができました。しかし今回は 70mV が限界です。オペアンプ出力で 0.37V。これ以上では出力が歪んで聞こえました。
以下、あちこちでベース電流を無視し、コレクタ電流とエミッタ電流は等しいものとして計算します。また、オペアンプの出力インピーダンスは 0Ω とし、R5 は無視しています。

出力側の負荷抵抗 RO は、エミッタ抵抗 RE とスピーカー負荷 RL を並列にした抵抗値です。

RO = RE・RL/(RE+RL) = 10 x 8 / (10 + 8) = 4.44 [Ω]

トランジスタのベース入力インピーダンス hic は、

hic = hFE・(RO+0.026/IC) = 306 x (4.44 + 0.026 / 0.092) = 1.45 [KΩ]

入力電圧 vi は 0.37x√2=0.52V なので、ベース電流 ib は、

ib = vb/(hic+R6) = 0.52 / (1.45 + 0.1) = 0.34 [mA]

となります。が、これはベースバイアス電流 IB=0.3mA を超えています。コレクタ電流 ic も、

ic = hfe・ib = 306 x 0.34 = 104 [mA]

となり、コレクタ電流 IC=92mA では不足しています。つまり、出力が歪んでしまうってこと。
スピーカーにかかる電圧 vo は、

vo = ie・RO = 0.104 x 4.44 = 0.46 [V]

実効値で 0.46/√2=0.33V ですから、出力 PS は、

PS = vo2/RL = 0.332 / 8 = 14 [mW]

となります。電圧の実測値は 0.29V、出力は 11mW でした (図4)。
エミッタからみたベース側のインピーダンス Ze は、ベース側のインピーダンスの 1/hfe ですから、

Ze = (hic+R6)/hfe = (1.45 + 0.1) x 103 / 306 = 5.1 [Ω]

したがって、エミッタフォロワ回路の出力インピーダンス Zo は、Ze とエミッタ抵抗 RE が並列に接続されるので、

Zo = Ze・RE/(Ze+RE) = 5.1 x 10 / (5.1 + 10) = 3.4 [Ω]

となります。

入出力波形

スピーカー出力電圧波形 1000Hz
図4. スピーカー出力電圧波形 1000Hz

図4 は、1000Hz の正弦波信号を入力したときの入出力波形です。
入力 (青) はオペアンプへの入力電圧で 65mV、出力 (黄) はスピーカーにかかる電圧 vor で 0.29V でした。出力 PS は、

PS = vor2/RL = 0.292 / 8 = 11 [mW]

上に書いたようにコレクタ電流が不足しているので、これ以上入力電圧を上げることができません。波形をみると、下側がちょっと歪んでいるようにも見えますね。ちなみに、エミッタフォロワ回路の出力は入力と同相です。

スピーカー出力電圧波形 50Hz
図5. スピーカー出力電圧波形 50Hz

図5 は 50Hz 時の入出力波形です。
入力電圧 70mV、出力電圧 0.21V で、出力は 5.5mW です。位相が 90° 近く進んでいます。コレクタ接地回路と同様に、低い音はほとんど聞こえてきません。

スピーカー出力電圧波形 7000Hz
図6. スピーカー出力電圧波形 7000Hz

図6 は 7000Hz 時の入出力波形です。
入力電圧 70mV、出力電圧 0.28V で、出力は 10mW です。位相が少し遅れています。聞こえ方はコレクタ接地回路と変わりないように思います。

後記

今回は、オペアンプ増幅回路の出力をエミッタフォロワ回路に入れて、小型スピーカーを駆動してみました。

冒頭のおおまかな検討でも大きな出力を得るのは難しそうだったのですが、やはりそのような結果です。エミッタフォロワ回路は電圧増幅率が 1 以下ですので、コレクタ接地回路より出力が小さくなってしまうのは当然なのでしょう。それなりの大きさでスピーカーを鳴らすという点では、コレクタ接地回路に軍配があがりそうです。
ただ、今回の実験では前段のオペアンプの出力をそのままバイアス電圧として利用しているので、電圧振幅が小さく歪みがでてしまいました。エミッタ電圧を 2V に上げてやれば、コレクタ接地に近い出力は得られるのではないかと思います。ベースバイアス回路が必要になりますが、エミッタフォロワ回路を使うならそのほうが良いでしょう。

しかし、どちらにしてもコレクタに大きな電流を流すわりには出力が小さく、効率が悪いです。そこを改善できるのがプッシュプル回路である。ということで、つぎはプッシュプル回路を試してみることにしましょう。

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