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アナログ回路 / エミッタフォロワ増幅回路

アナログ回路というと、なんだかむずかしい。増幅回路も、わかるようなわからんような。
そこで、増幅回路についてあらためて勉強してみようと思います。むずかしい理論は教科書みてください。ここでは、俺が電子工作でかんたんに遊べる程度のことをやっていきます。

前回までに、エミッタ接地増幅回路について、いろいろ試してきました。

エミッタ設置増幅回路のことは、もうすっかりわかった (^_^;) ので、今回はエミッタフォロワ増幅回路を勉強してみます。

エミッタフォロワ回路は、コレクタが共通端子になるコレクタ接地回路です。が、回路の形も、動作も、エミッタ接地回路にとてもよく似ています。出力をエミッタからとるか、コレクタからとるか。違いはそれだけ、じゃないかなと思えるほどに。

動作点

直流動作点を決めていきましょう。基本的な考え方は、エミッタ接地回路と同じです。

図1. エミッタフォロワ増幅回路

コレクタ電流 IC を 5mA とします。電源電圧 VCC を 5V、エミッタ電圧 (出力電圧) VE を 3V とすると、エミッタ抵抗 RE は、

RE = VE / IC = 3 / (5 x 10-3) = 600 [Ω]

E6系列より 680Ω にすると、エミッタ電圧 VE は、

VE = IC x RE = 5 x 10-3 x 680 = 3.4 [V]

直流電流増幅率 hFE を 200 とすると、ベース電流 IB は、

IB = IC / hFE = (5 x 10-3) / 200 = 0.025 [mA]

ブリーダ電流 IRB をベース電流の 10倍の 0.25mA 流すことにします。ベースエミッタ間電圧 VBE を 0.65V とするとベース電圧 VB は 4.05V なので、

RB1 = (VCC - VB) / IRB = (5 - 4.05) / (0.25 x 10-3) = 3.8 [KΩ]
RB2 = VB / IRB = 4.05 / (0.25 x 10-3) = 16.2 [kΩ]

E6系列より、RB1 = 3.3KΩ、RB2 = 15KΩ とします。

以上より、動作点は、

VB = VCC x RB2 / (RB1 + RB2) = 5 x 15 x 103 / { (3.3 + 15) x 103 } = 4.10 [V]
VE = VB - VBE = 4.10 - 0.65 = 3.45 [V]
IC = VE / RE = 3.45 / 680 = 5.07 [mA]

となりました。

等価回路

図2. エミッタフォロワ増幅回路の等価回路

等価回路で、交流信号の動作を検討します。

エミッタフォロワ回路では、コレクタが共通端子です。特徴的なのは、入力側と出力側がつながっていること。つまり、相互に影響を受ける、ってこと。

入力インピーダンス

この回路の入力インピーダンスは、出力側の回路も影響することが、等価回路からわかります。出力側にはエミッタ抵抗 RE と負荷抵抗 RL があるので、この合成抵抗を Ro としておきましょう。

Ro = 1 / { (1 / RE) + (1 / RL) }

入力電圧を vi、ベース電流を ib としたとき、キルヒホッフの法則により、

vi = ib x hic + (1 + hfe) x ib x Ro

の関係式がつくれます。
コレクタ接地回路の入力インピーダンスは hic ですが、hie と同じです。また、1 ≪ hfe ならば、

vi = ib x hie + hfe x ib x Ro

となります。
したがって、ベースの入力インピーダンス Zb は、

Zb = vi / ib
   = (ib x hie + hfe x ib x Ro) / ib
   = hie + hfe x Ro
   = hfe x 0.026 / IC + hfe x Ro
   = hfe x (Ro + 0.026 / IC)

どこかでみたことのある式になりました。エミッタ接地増幅回路のベースインピーダンスの式と同じですね。ただし、エミッタには負荷抵抗もつながることに注意が必要です。

以上より、負荷抵抗 RL を 680Ω としたとき、ベースの入力インピーダンス Zb は、

Ro = 1 / { (1 / RE) + (1 / RL) } = 1 / { (1 / 680) + (1 / 680) } = 340 [Ω]
Zb = hfe x (Ro + 0.026 / IC) = 200 x { 340 + 0.026 / (5.07 x 10-3) } = 69 [KΩ]

回路の入力インピーダンス Zin は、

Zin = 1 / { (1 / RB1) + (1 / RB2) + (1 / Zb) } 
    = 1 / { (1 / 3.3) + (1 / 15) + (1 / 69) } = 2.6 [KΩ]

となりました。エミッタフォロワ増幅回路は入力インピーダンスが高いといいますが、それはベースの入力インピーダンスのこと。回路としては、ブリーダ抵抗のために、思ったほど高くはならないです。

出力インピーダンス

回路の入力側には、ブリーダ抵抗 RB1、RB2 と、前段の回路の出力インピーダンス Rs があります。これらの合成抵抗を Ri としておきます。

Ri = 1 / { (1 / Rs) + (1 / RB1) + (1 / RB2) }

エミッタからみたとき、ベース側のインピーダンスは 1 / hfe になりますから、エミッタの出力インピーダンス Ze は、

Ze = (Ri + hic) / hfe
   = (Ri + hfe x 0.026 / IC) / hfe
   = Ri / hfe + 0.026 / IC

前段の発振回路の出力インピーダンス Rs は 2.3KΩ でしたので、

Ri = 1 / { (1 / Rs) + (1 / RB1) + (1 / RB2) }
   = 1 / { (1 / 2.3) + (1 / 3.3) + (1 / 15) } = 1.24 [KΩ]

エミッタの出力インピーダンス Ze は、

Ze = Ri / hfe + 0.026 / IC
   = 1.24 x 103 / 200 + 0.026 / (5.07 x 10-3) = 11.3 [Ω]

したがって、回路の出力インピーダンス Zo は、

Zo = 1 / { (1 / Ze) + (1 / RE) }
   = 1 / { (1 / 11.3) + (1 / 680) } = 11.1 [Ω]

です。出力インピーダンスは低くなりそうです。

電圧増幅率

入力電圧 vi は、

vi = ib x hie + hfe x ib x Ro

でした。
また、出力電圧 vo は、1 ≪ hfe ならば、

vo = (1 + hfe) x ib x Ro
   = hfe x ib x Ro

したがって、電圧増幅率 Av は、

Av = vo / vi
   = (hfe x ib x Ro) / (ib x hie + hfe x ib x Ro)
   = (hfe x Ro) / (hie + hfe x Ro)
   = Ro / (0.026 / IC + Ro)

コレクタ電流 IC は 5.07mA、出力側の合成抵抗 Ro は 340Ω ですので、

Av = 340 / { 0.026 / (5.07 x 10-3) + 340 } = 0.99

電圧増幅率は 1 よりちょっと小さいといわれますので、間違いなさそうです。

実験回路図

以上を基につくったのが図3 です。

当初、発振回路の出力を直接増幅回路に入れようと考えていたのですが、思ったほど入力インピーダンスが高くなく、発振出力電圧が低下してしまいました。そこで、今回もあいだにオペアンプによるバッファを入れました。オペアンプの出力インピーダンスは、実測値で 70Ω です。計算しなおさないといけない部分がありますが、大勢に影響ないと思うので、そのままにしておきます。

図3. エミッタフォロワ増幅回路の実験回路図

左側は、これまでと同じツインT型正弦波発振回路です。発振周波数 1KHz、出力電圧 0.49Vp-p、出力インピーダンス 2.3KΩ です。
中央は、オペアンプ LMV324 によるバッファ。5V 単電源のレールツーレールタイプです。入力インピーダンス 24KΩ、出力インピーダンス 70Ω。
右側が、今回実験するエミッタフォロワ増幅回路。入力インピーダンス 2.6KΩ、出力インピーダンス11.1Ω、電圧増幅率 0.99 の計算になっています。

各部の実測値

計算値実測値
VE3.45V3.39V
VB4.10V4.07V
VBE0.65V0.68V
IC5.07mA4.99mA
IB0.025mA
Zin2.6KΩ2.4KΩ
Zout11.1Ω20.7Ω
vi0.49mV0.47mV
vo0.49mV0.46mV
Av0.990.98

各部の実測値です。電流は、電圧と抵抗から算出した値です。

すべて、ほぼ計算通りになっています。インピーダンスは簡易的な計測ですので、誤差が大きいと思いますが、傾向はまちがってないでしょう。

波形の歪もないです。入力波形と同じで、きれいでした。

だた、入力インピーダンスがそんなに高くなかったのが、ちょっと期待外れでした。まぁ考えてみりゃ、ほとんどがブリーダ抵抗で決まるんですから、そんなものなんですけど。
インピーダンスが、入力側と出力側がたがいに影響を受ける、というのは目からウロコでした。実測値からそれはうかがえませんけど、理屈としてはそーゆーこと。覚えておきます。

後記

今回は、エミッタフォロワ増幅回路の勉強をしました。

エミッタフォロワ回路は入力インピーダンスが高い。たしかに、ベースからみたインピーダンスは高いですが、ブリーダ抵抗をつけると、入力インピーダンスは低くなる。実験してみて、納得です。

発振回路のバッファとして使いたいです。そのときは、コレクタ電流を減らして、ブリーダ抵抗を大きくする。こんどやってみましょう。そんなことを考えられるようになったのも、ちょっとばかり増幅回路がわかってきたから、でしょうかねぇ。

さて、形のあるものをつくったわけではありませんが、アナログ回路の一歩目を踏み出せたでしょうか。
半世紀前に初めて勉強してチンプンカンプンだった増幅回路のことが、少しばかりわかった。もしかするとそれなりに利用することもできるかもしれない。そう感じられるほどに勉強はできたかなと思います。

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