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アナログ回路 / エミッタ接地増幅回路の増幅動作

アナログ回路というと、なんだかむずかしい。増幅回路も、わかるようなわからんような。
そこで、増幅回路についてあらためて勉強してみようと思います。むずかしい理論は教科書みてください。ここでは、俺が電子工作でかんたんに遊べる程度のことをやっていきます。

前回は、電流帰還バイアス回路をつくって、各部の電圧と電流を確認してみました。でも、まだ、これはいったいなんの回路なのか?って感じです。

今回は、この回路で「増幅」ができるのか、を確かめていきたいと思います。

電流帰還バイアス回路

図1. 電流帰還バイアス回路の実験回路

図1 は、前回、電流帰還バイアス回路の実験をおこなった回路です。各部の電圧を測定し、電流値を算出しました。

では、この回路の入力 VIN に、なにがしかの電圧を与えて、出力 VOUT がどう変化するのかをみてみたいと思います。

あー、でも、どうやって入力 VIN に電圧かければいいんでしょ? そんなとこから、どーすればいいのか迷ってしまう (;´Д`)
ここは、やみくもに実験するんじゃなくて、いろいろ調べながらやっていきましょう。

電圧増幅率 AV

入力電圧 VIN が変化したときに、出力電圧 VOUT がどれだけ変化するか、その比を電圧増幅率 AV といいます。入力電圧の変化量を ΔVIN、出力電圧の変化量を ΔVOUT としたとき、

AV = ΔVOUT / ΔVIN = ΔVC / ΔVB

ベース電圧 VB が変化すると、ベースエミッタ間電圧 VBE がほぼ一定なので、エミッタ電圧 VE も同じだけ変化します。するとコレクタ電流 IC が変化します。エミッタ抵抗を RE とすると、コレクタ電流の変化量 ΔIC は、

ΔIC = ΔVE / RE = ΔVB / RE

コレクタ電流 IC が変化すると、負荷抵抗 RC の電圧降下量が変化します。すると、コレクタ電圧の変化量 ΔVC は、

ΔVC = RC x ΔIC = RC x ΔVB / RE

ということで、電圧増幅率 AV は、

AV = ΔVC / ΔVB = (RC x ΔVB / RE) / ΔVB = RC / RE

となります。

え? なんですか、これは!?
電圧増幅率 AV は、負荷抵抗 RC とエミッタ抵抗 RE の比で決まる。
ベース電流とかコレクタ電流とかじゃなくて、抵抗値で決まっちゃうんです。

図1 の回路の電圧増幅率 AV は、

AV = RC / RE = 2.2 / 1 = 2.2

入力電圧を変化させると、出力電圧はその 2.2倍の変化量になる、という計算になりました。

入力インピーダンス

さて、入力 VIN に電圧をかけたら、電流が流れ込むでしょう。どれほどの電流が流れますか? それは、入力インピーダンスがわかれば、計算できそうです。

ベース側からみた入力インピーダンス ZB は、ベース電圧の変化量 ΔVB を、ベース電流の変化量 ΔIB で割った値です。

ZB = ΔVB / ΔIB
   = ΔVB x hFE / ΔIC
   = ΔVB x hFE / (ΔVB / RE)
   = hFE x RE

ってことで、エミッタ抵抗 RE の直流電流増幅率 hFE 倍になる。実験で使っているトランジスタ 2SC1815GR の直流電流増幅率は hFE = 248 でしたので、

ZB = hFE x RE = 248 x 1 = 248 [KΩ]

この回路の入力インピーダンス ZIN は、ベースの入力インピーダンス ZB に、ブリーダ抵抗 RB1、RB2 が並列につながっている (*1) とみて、

ZIN = 1 / { (1 / RB1) + (1 / RB2) + (1 / ZB) }
    = 1 / { (1 / 68) + (1 / 33) + (1 / 248) } = 20 [KΩ]

と、計算できそうです。

(*1) テブナンの定理 入力 VIN から回路をみたとき、ZB と RB2 は並列につながっています。RB1 は電源をとおして GND につながっていますが、テブナンの定理では電源はないものと考えるので、RB1 も並列につながっていることになります。

じっさいに入力インピーダンスを測ってみましょう。
部品箱に 33KΩ のボリュームがありますので、これを VIN と GND 間につなぎます。ボリュームを回して、VIN の電圧が、開放時の電圧 1.53V の半分の 0.77V になるように調整します。そのときのボリュームの抵抗値をテスタで測ると、20KΩでした。
これが、回路の入力インピーダンスの実測値。ぴったりです。

入力電圧 VIN を変化させてみる

図1 の回路の、電圧増幅率 AV は 2.2、入力インピーダンス ZIN は 20KΩだとわかりました。
とすると、入力電圧 VIN を ±0.5V 変化させれば、出力電圧 VOUT は ±1.1V 変化するんじゃないだろうかと。そして、入力電流は ±0.5V / 20KΩ = ±0.03mA 流れるんじゃなかろうかと。そんなふうに考えられます。

じっさいに、入力 VIN に電圧をかけてみました。
信号電圧源の出力インピーダンスが、回路の入力インピーダンスより十分小さくなるように、図2 のように抵抗分圧してみました。入力電圧を計算すると、

VIN = VCC x R2 / (R1 + R2) = 5 x 220 / (330 + 220) = 2 [V]

と、電圧は上がることになります。

図2. 入力に電圧を上げた実験回路

入力電圧を上げたときの、各部の電圧測定値と、電流計算値は、次のようになりました。

変化前変化後増減
VIN1.53V2.02V+0.49V
VOUT3.03V2.08V-0.95V
AV-1.94
IC0.92mA1.35mA+0.43mA
IIN+0.03mA (*1)
図3. 入力電圧を上げたときの電圧増幅率
(*1) IIN = I1 – I2 = 9.21 – 9.18 = 0.03 [mA]

入力電圧の変化 +0.49V に対して、出力電圧の変化は -0.95V。1.94倍になりました。AV がマイナスになっているのは、増減の方向が逆になっていることを示しています。
コレクタ電流の変化は、ΔIC = ΔVB / RE にほぼ等しいです。入力電流も計算通りでした。

今度は、入力電圧を下げてみます。

VIN = VCC x R2 / (R1 + R2) = 5 x 100 / (470 + 100) = 0.88 [V]

図4. 入力電圧を下げた実験回路

入力電圧を下げたときの、各部の電圧測定値と、電流計算値は、次のとおり。

変化前変化後増減
VIN1.53V0.89V-0.64V
VOUT3.03V4.45V+1.42V
AV+2.22
IC0.92mA0.28mA-0.64mA
IIN-0.03mA (*2)
図5. 入力電圧を下げたときの電圧増幅率
(*2) IIN = I1 – I2 = 8.87 – 8.90 = -0.03 [mA]

入力電圧を下げたとき、出力電圧は上昇し、AV は +2.22 になりました。コレクタ電流、入力電流の変化も、計算どおりになりました。

入力電圧を上げたとき、すこし誤差が大きくなるようです。ベース電流が無視できなくなっていますので、それが影響するんでしょうか? ベース抵抗をもっと小さくすれば、改善するのかもしれません。

出力インピーダンス

エミッタ接地回路の出力インピーダンス ZOUT は、コレクタ負荷抵抗 RC と同じ、とのことでした。
これは、コレクタエミッタ間のインピーダンスがとても大きいと考えられる、つまり、出力側からみたとき、コレクタエミッタ間が開放されているとみることができるから。
なので、エミッタ抵抗がある電流帰還バイアス回路でも、エミッタ抵抗は影響せず、変わりないです。

出力インピーダンス ZOUT は、

ZOUT = RC = 2.2 [KΩ]

確かめてみましょう。

出力 VOUT には、3.03V の電圧がでています。VOUT と GND との間に、出力インピーダンスと同じ 2.2KΩ の抵抗をつないでみましょう。すると、出力電圧 VOUT は半分の 1.52V に低下しました。電圧が半分になったとき、つないだ抵抗値が出力インピーダンスに等しいので、回路の出力インピーダンス ZOUT は 2.2KΩ であることが確認できました。

ちなみに、このときエミッタ電圧 VE は 0.92V で変化していません。つまり、コレクタ電流 IC は 0.92mA のまま、ということ。

コレクタ負荷抵抗 RC に流れている電流 IRC は、

IRC = (VCC - VOUT) / RC = (5.06 - 1.52) / (2.2 x 103) = 1.61 x 10-3 = 1.61 [mA]

外部へ流れ出ている電流 IOUT は、つないだ外部負荷抵抗を RL とすると、

IOUT = VOUT / RL = 1.52 / (2.2 x 103) = 0.69 x 10-3 = 0.69 [mA]

コレクタ電流 IC は、その差ですから、

IC = IRC - IOUT = 1.61 - 0.69 = 0.92 [mA]

と、計算が一致します。

出力インピーダンスが高い (大きい) ということは、出力から電流を取りだすと大きく電圧が下がる、ということ。
電圧が下がらないようにするには、コレクタ負荷抵抗を小さくする必要があります。が、そうすると無負荷時のコレクタ電圧が高くなり、出力の幅が小さくなってしまう。そんなこんなをうまくバランスとって、電源電圧やコレクタ電流を決めていくことになります。

後記

ふぅ、また長くなったので、一休みしましょ。

今回は、電流帰還バイアス回路の入力を変化させて、出力が増幅されることを確認しました。あわせて、電圧増幅率、入力、出力インピーダンスについても調べてみました。

さて、エミッタ接地増幅回路ができたので、入力に低周波信号とか入れてみたいです。
でも、ファンクションジェネレータのような洒落たものは持ってないです。なにか、簡単に正弦波を発振できる回路とか、ないでしょうかねぇ。

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