アナログ回路というと、なんだかむずかしい。増幅回路も、わかるようなわからんような。
そこで、増幅回路についてあらためて勉強してみようと思います。むずかしい理論は教科書みてください。ここでは、俺が電子工作でかんたんに遊べる程度のことをやっていきます。
前回までに、電流帰還バイアス回路のエミッタ接地増幅回路をつくり、入力の変化が増幅されて出力されることを確認しました。また、電圧増幅率と、入力、出力インピーダンスについて調べてみました。
今回は、テストのために増幅回路に入力する低周波信号がほしいので、ツインT形正弦波発振回路をつくります。
正弦波発振回路
正弦波発振回路というと、やっぱりウィーンブリッジ形を思い浮かべますが、こいつは振幅制御が面倒らしい。位相形というものありますが、うまく発振してくれないとか、不安定だとか。
ちょっと実験するためなので、できるだけ簡単な回路がいいんですけど。
いろいろ探しているうちに、グーグル先生が教えてくれたのが「ツインT形発振回路」でした。なんと、トランジスタ 1石でできちゃうんです。しかも、わりと簡単に発振してくれるらしい。
ツインT形正弦波発振回路
ツインT形発振回路 (図2) は、R1、R2、C1によるローパスフィルタと、C2、C3、VR1によるハイパスフィルターとを組み合わせたノッチフィルタを構成し、これをトランジスタ増幅回路の正帰還として用いた正弦波発振回路です。
ノッチフィルタの抵抗 R、コンデンサ C の値は、
R = R1 = R2 R / 2 = VR1 C = C2 = C3 C x 2 = C1
の関係になるようにします。このときの発振周波数 f は、
f = 1 / (2π x C x R)
です。
図2 の回路定数での発振周波数 f は、
f = 1 / (2π x C x R) = 1 / (2π x 47 x 10-9 x 3.3 x 103) = 1027 [Hz]
VR1 を変化させると発振周波数が変化します。1KHz では 800Ω ほどになりました。
出力をフィルタ部分の途中から取りだしてます。コレクタから取ったほうが出力が大きいのですが、波形が歪みます。この位置では、出力は小さくなりますが、波形はきれいです。
温度特性はよくないので、周波数はフツーに変動しますけど、簡単な回路にしては安定していて、いい感じです。
各部の電圧など
各部の電圧の実測値は、電源電圧 VCC = 5.05V、コレクタ電圧 VC = 0.99V、ベース電圧 VB = 0.69V でした。
R3 (470Ω) の両端電圧が 4.06V でしたので、回路に流れ込む電流は 8.64mA になります。
どれだけの電流を流せばよいのか、わかりません。が、10mA 前後で出力が最大になり、それ以上でもそれ以下でも下がっていきます。また、周波数 1KHz 付近で、出力は最大になります。
ということで、このあたりでもっともしっかり発振しているのだろうと判断して、R3 は 470Ω にしました。1KHz 発振時の出力電圧は 0.49Vp-p でした。
回路に流れ込んでいる電流 8.64mA は、すべてエミッタ電流 IE になります。
ベース電流 IB とコレクタ電流 IC は、
IB = (VC - VB) / (R1 + R2) = (0.99 - 0.69) / {(3.3 + 3.3) x 10-3} = 0.045 x 10-3 = 0.045 [mA] IC = IE - IB = 8.64 - 0.045 = 8.60 [mA]
になります。
出力インピーダンスを測定すると、2.3KΩ でした。
ただ、ノッチフィルタの途中から出力しているので、負荷抵抗が発振周波数に影響します。影響を避けるには、次段のインピーダンスを高くするか、コレクタ側から出力しないといけません。ちなみに、コレクタ側の出力インピーダンスは 1.4KΩ でした。
実験しているエミッタ接地増幅回路の入力インピーダンス ZIN は 20KΩ です。出力コンデンサ C4 と入力インピーダンス ZIN はハイパスフィルタを構成します。
出力コンデンサ C4 を 47nF としたときのカットオフ周波数 fC は、
fC = 1 / (2π x C4 x ZIN) = 1 / (2π x 47 x 10-9 x 20 x 103) = 169 [Hz]
発振周波数は 1KHz なので、とりあえず問題なさそうです。あとでまた、検討しなおしましょう。
後記
今回は、エミッタ接地増幅回路のテスト用に、ツインT形正弦波発振回路をつくりました。
ツインT形発振回路は、ノッチフィルタの出力位相が 180° ズレることを利用している、ようです。
図3 は、今回つくったツインT発振回路のノッチフィルタのボード線図です。
図に示されているように、VR1 の抵抗値を R の 1/2 より小さくすることで、ハイパスフィルタのリジェクト周波数が高くなり、位相が 180° ズレます。 これを、ベース側へ帰還させると、正帰還となり発振する。のだろうと。
R1 = 3.3KΩ R2 = 3.3KΩ C1 = 0.1μF LPF f0 = 995Hz C2 = 47nF C3 = 47nF VR1 = 800Ω HPF f0 = 1474Hz
ボード線図の作成は、OKAWA Electric Desine さんのフィルタ計算ツールを利用させていただきました。ありがとうございます。
増幅回路もむずかしいですが、発振回路はさらにむずかしい。でも、増幅回路の出力を正帰還させている、という発振の原理を知っていれば、とりあえずそれでいいかなと。で、増幅回路について理解が深まれば、発振回路についても理解できるようになる、かもしれない。うーん、無理か (;´Д`)
では、1KHz の低周波信号が用意できましたので、次回はこれをエミッタ接地増幅回路に入力して、増幅動作を確認してみましょう。