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NE555でチャージポンプしてみた、けれど…

タイマーID NE555 を使ってちょっと遊んでみようかなと思ったのですが、ちょうど見かけたのが電圧を上昇させるチャージポンプ回路。そのドライブ回路として NE555 を使ってみましょう。

NE555 による発振回路

NE555 発振回路
図1. NE555 発振回路

NE555 を非安定動作 (A-stable Operation) で使う発振回路、よくみる普通の応用回路です。

発振周波数を計算してみましょう。

tH=0.693x(4.7+47)[kΩ]x100[pF]=3.58[μs]
tL=0.693x47[KΩ]x100[pF]=3.26[μs]
f=1/(3.58+3.26)[μs]=146[KHz]

実測値は 98KHzでした。計算値と合わない? まぁそんなもんです。

チャージポンプ回路

2倍昇圧回路

2倍昇圧回路
図2. 2倍昇圧回路

これもよくみる 2倍昇圧回路。負荷として LED 3個をつけてみました。

無負荷時の出力電圧は 9.18Vです。電源電圧 5Vに対して 2倍になってません。電圧計により少し電流が流れるので、ダイオードに順方向電圧が生じるせいでしょうか?
いいえ、これは NE555 が出力するドライブ電圧 DRV が 4Vほどしかないからです。

チャージポンプ回路のしくみを考えてみましょう。話を簡単にするために、ダイオードの順方向電圧は 0Vとします。

ドライブ電圧 DRV が LOW (0V) のとき、コンデンサ C4、C5 は 5Vに充電され、それぞれに Q4、Q5 の電荷が蓄えられます。DRV が HIGH (5V) になると、C4 に蓄えられた電荷 Q4 がポンプアップされて、Q4 の半分の電荷が C5 に流れ込みます。Q5 は 1.5倍になり C5 の電圧は 7.5Vに上昇します。
DRV が LOW になると Q4 が補充されます。HIGH になると、今度は Q4 の 1/4 が C5 に流れ込み 8.75Vになる。また DRV が LOW になって Q4 が満タンになり、HIGH になると 1/8 が C5 に流れ込んで 9.375Vになる。
ということを繰り返して、C5 はどんどん電源電圧の 2倍の 10Vに近づいていきます。

ところが、現実にはこの DRV が 5Vじゃない。NE555 から出力されるドライブ電圧は 4V。ポンプの馬力が 4Vしかないので、C5 の電圧は 9V までしか上昇できないのです。

負荷として LED を 3個つないだときの出力電圧は 6.75V、負荷電流は 10.2mAでした。ドライバが電荷をどんどんポンプアップしても、電荷は負荷電流として流れ出てしまうので、1.75V増でバランスしている状態です。

ならば、コンデンサを大きくして送り込む電荷量を増やしたらどうか? うーん、試してみたけど効果なかったです。なぜ? ダイオードが邪魔するのでしょうか? 俺にはわかりません。だからといって、無制限に容量を増やせば突入電流で回路がやばいです。
ポンプの回転数を上げる、つまりドライバの周波数を高くしてみましょうか。これは少し効果があるようですけど、NE555 では 100KHzがお勧め限界です。
ポンプの馬力を大きくする、これはドライブ電圧を高くするということ。しかし、そのためにドライブ回路を追加するってもなんだかなぁだし、簡単でうまい回路が思い浮かびません。

3倍昇圧回路

3倍昇圧回路
図3. 3倍昇圧回路

では、もっと出力電圧を上げるために、3倍昇圧回路にしてみましょう。

DRV でポンプアップすると、C6 と C8 の電荷 Q6、Q8 が、それぞれ C7、C9 に流れ込み 10V になります。すると今度は、C7 の電荷 Q7 が C8 に流れ込み、ポンプアップされて C9 を 15V まで上昇させます。

が、実際には DRV は 4Vなので、13Vまでしか上昇できません。負荷をつなぐと電圧は 6.91Vまで下降し、出力電流は 9.5mAでした。

3倍昇圧にしても、2倍昇圧と変わらない結果です。
ありあわせのパーツでつくるチャージポンプ回路では、こんなものなのでしょうか。たしかに、もっと小さな電流ならば高い電圧を得られます。が、思ったより出力インピーダンスが大きくて、ちょっと期待はずれでした。

負電圧回路

負電圧回路
図4. 負電圧回路

ついでなので、負電圧チャージポンプ回路も試してみましょう。
3倍昇圧回路のダイオードやコンデンサの極性を反転させた感じですね。

DRV が HIGH のとき、C10、C12 に電荷が蓄えられます。DRV が LOW に落ちると C10、C12 が放電し、C11、C13 から電荷が流れ込んで -5Vになります。さらに、C13 から C12 へ電荷が流れ込んで -10Vまで電圧が下がります。実際にはドライブ電圧が 4Vなので -8Vまでしか下がりません。
負荷電流 -8.5mAのとき、出力電圧は -2.76Vでした。

インバータを使ったチャージポンプ回路

NE555 を使ってみよう、という趣旨から外れてしまいますが、アンバッファインバータ 74HCU04 を使ったチャージポンプ回路を試してみました。

インバータを使ったチャージポンプ回路
図5. インバータを使ったチャージポンプ回路

左から、U2F、U2E は矩形波発振回路、U2D は出力バッファです。これまで何回か 74HC04 で同様の発振回路をつくっていますが、今回は正統に 74HCU04 を使いました。発振周波数は114KHz (実測値) です。

U2A、U2B でコンデンサを交互にポンプアップしていますので、4倍昇圧になります。前出の 3倍昇圧回路が 2シリンダなのに対して、こちらは 3シリンダといった感じ、効率アップですね。
ドライブ電圧は 4.5Vなので、出力電圧は 18.5Vです。負荷電流 9.7mA時でも 11.23Vの電圧を確保できました。

後記

今回は、NE555 を使ってチャージポンプ回路を動かしてみました。けれど、なんだかあまりうまくありません。チャージポンプをドライブするには、NE555 の出力はちょっと力不足のようです。

矩形波発振回路なら、これまでのようにインバータで簡単につくれます (参考記事)。残りの回路でチャージポンプ回路ができます。74HCU04 にはインバータがもう 1回路ありますから、もう少し電圧を上げることも可能でしょう。
また、74HCU04 の電源電圧は 2V以上ですから、乾電池 2本での駆動も可能です。部品箱にあるパーツでつくるチャージポンプ回路としては、こっちのほうが簡単で優秀のように思えます。

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