とうとう買っちゃいましたよ、オシロスコープ。OWON の SDS1102 です。だんだんと電子工作の沼に沈み込む meyon さんであります (^_^;)
閑話休題。
前回は、ステッピングモータをバイポーラ駆動で回してみました。
今回は、こいつにチョッパ制御回路を付け加えて、チョッパ駆動に挑戦してみましょう。
チョッパ駆動とは、毎度申し訳ありませんが、ググって下さい。
簡単に言うと、これまでやってきたのは、ステッピングモータに一定の電圧をかける「定電圧駆動」だったんですが、チョッパ駆動は、モータ電流を一定に制御する「定電流駆動」方式です。こっちのほうがステッピングモータの特性を引き出せるんだとか。
チョッパ駆動の方法
本格的にチョッパ駆動回路を作ろうなんて気は、ないです。基本的な、原理っぽいものを作ってみようという試み。
毎度々々「ググって下さい」なんて言ってますが、じつは、ググっても見つかるのは難しい理論的なことばかりで、具体的に作ってみたという電子工作的なものにはなかなか出会えないんですよねぇ。自分で作ってみて、初めてわかることもありますから。
チョッパ駆動は、下図のような構成でやってみようと思います。
回路はモータの A 相を示しています。
H ブリッジ駆動回路のローサイドの MOSFET Q31 のソース側に 0.47オームの抵抗 R43 を入れ、電流を検出します。A 相の直流抵抗は 24Ω 、電源電圧を 12V とすると流れる電流は 0.5A です。
実際には MOSFET による電圧降下がありますが、細かいことは無視して「だいたいこれくらい」でいきますよ。
R43 で検出される電圧は 0.5A × 0.47Ω = 0.24V です。
これをオペアンプ OpAmp1 で増幅します。増幅率は 1 + (68 / 15) = 5.5 ですので、オペアンプの出力は 0.24V × 5.5 = 1.3V になります。
オペアンプ OpAmp2 はコンパレータとして動作します。
基準電圧は、ツェナーダイオード 1N5226B が部品箱にありましたので、これを使いましょう。規格のツェナー電圧は 3.3V ですが、ツェナー電流が 5mA 程度だと 3V ぐらいになりますよ。5KΩ のボリュームで電圧設定して、1V ぐらいをコンパレータの + 側に印加します。
コンパレータの ー 側は、増幅したモータの電流信号を入力します。
モータ電流が流れていないとき、コンパレータの出力は HIGH になっています。モータに電流が流れて基準電圧を超えると、コンパレータ出力は LOW になります。つまり、電流が大きくなると LOW になるという仕掛け。
さて、こいつを H ブリッジ制御用の信号 A3 と AND 演算します。そして、Q31 のゲートに入れるとどうなるか。
Q31 がオフのときモータ電流は流れませんので、コンパレータ出力は HIGH 。そこで A3 が HIGH になると、AND 出力も HIGH になり、Q31 がオンします。
モータに電流が流れ始めて基準値を超えると、コンパレータ出力が LOW になる。と、AND 出力は LOW になり Q31 がオフ、モータ電流は減少します。
モータ電流が基準値を下回ると、また Q31 がオンし、モータ電流が増加する。この繰り返し。
ってことで、モータ電流が一定値に制御される。はずです、たぶん。
チョッパ制御回路
ということで、下図のようなチョッパ制御回路を作りました。
上が A 相、下が B 相の制御用です。どっちも同じ回路です。
出力の AND ゲートは、前回も使った NAND ゲート IC 74HC00 に変更しましたので、NOT を追加しています。
H ブリッジ制御の A3 と A4 は交互にオンになりますので、電流検出は共通にできます。B 相は位相が 90° ずれますし、各相それぞれに電流値を調整しないといけませんから、別回路にします。
全体回路図
基本的には、バイポーラ駆動回路と同じです。
上で説明したように、電流検出用の抵抗を A 相、B 相にそれぞれ取り付け、チョッパ制御回路 (右下部分) を追加しています。
ブレッドボード
一番下のブレッドボードが、今回追加したチョッパ制御回路です。
左がオペアンプ LM324 、右の 2 個の DIP が NAND ゲート IC 74HC00 です。
基準電圧調整用の半固定ボリュームが、間に見えています。
上のブレッドボードが、前回から使っている H ブリッジ駆動回路ですが、電流検出用の抵抗器を追加しています。
抵抗器は、部品箱にあった金属被膜の 3W 型を使いました。
電流が 0.5 A ならば、電力は 0.5A 2 × 0.47Ω = 0.12W ですから、計算上は 1/4W 型で十分です。が、電流検出用ですし、1W 型以上にしておくのが良いかなと。
各部の波形
さてと、せっかくオシロスコープを買いましたので、各部の波形を計測してみましょう (^_^;)
まず、チョッパ制御を行なわない状態の波形です。コンパレータの基準電圧を高く設定して、出力が常に HIGH になるようにしておきます。
上の波形は、H ブリッジ制御信号 A3 の出力です。HIGH のときに Q31 がオンし、LOW のときには A4 が HIGH になって Q41 がオンします。
下の波形が、電流検出抵抗の出力、つまりモータ電流信号です。テスターで計測すると 0.20V なので、電流値で 0.43A 。だいたい計算通りですね。
次は、オペアンプによる増幅部です。
上は、同じく制御信号 A3 です。
下が、オペアンプで増幅したモータ電流信号です。最大値が 1.3V ぐらいになっていますから、これも計算通り。
では、チョッパ制御を有効にしてみましょう。コンパレータの基準電圧を 0.7V に調整しました。
おお、電流信号が、みごとにチョッピングされているようですよ。
テスターで計測した電流検出抵抗の出力は 0.12V でしたので、モータ電流は 0.26A 。60% ほどの電流になりました。
それでも、トルクはそれなりに出ており、ピニオンを手でかなり強く掴まないとロックしません。
ちなみに、モータの発熱ですが、やはり熱くはなりますが、定電圧駆動よりはかなり改善している感じです。
電流信号を拡大してみました。
うーん、どうなんでしょうねぇ?周波数が 1.84KHz となっていますので、周期は 0.54ms 。そんな速度でオンオフしています。
(* 訂正あり 追記 2021/09/12 を参照下さい)
考えてみたのですが、電流がオンオフするよりも、一定の電流値付近で波打つようになったほうが良いんじゃないかな。波形でも部分的にそんな感じのところがありますね。
周期をもっと短くすればそうなるような気がします。
ところで、定電流制御になってますか?
さぁ、どーなんでしょ (^_^;) でもね。
ユニポーラ駆動を試したときに、モータの発熱がすごいので、電源電圧を 5V に落としてみたことがあります。たしかに発熱は少し改善しましたが、トルクも弱く、起動できないこともありました。
そのときのモータ電流は、たぶん 0.4A ほどです。
バイポーラ駆動のほうがトルクが大きいらしいのですが、それでも、今回のチョッパ駆動では、0.26A 程度のモータ電流でかなりのトルクがでています。
条件が異なるので比較はできませんが、でもなんだか、チョッパ駆動、いいんじゃね?って感じです。
今回は、ステッピングモータを「バイポーラ・チョッパ駆動」で回してみました。
どんどんと回路が複雑になってしまいましたが、H ブリッジ回路をはじめ、プッシュプル回路での MOSFET 駆動、オペアンプによるセンサー信号の増幅、コンパレータによる比較制御など、いろいろ楽しめました。
さて、ステッピングモータに関しては、もう一つやってみたい制御があるので、またちょっとゆっくり考えてみます。なんか形になりそうだったら、報告します。
[訂正] 追記 2021/09/12
モータ電流波形を訂正します。
上に記載したモータ電流の拡大波形は、オシロスコープのサンプリングレートが 10KS/s だったので、不正確だと思います。
左図 (1) は、制御信号 A3 が HIGH になり、Q41 から Q31 へ切り替わったときのモータ電流波形です。
Q41 がオフになって電流が切れ、Q31 がオンになると漸増、7ms 後にチョッパ制御が始まります。
この切り替わり部分を、サンプリングレート 100MS/s で計測すると、左図 (2) のようになります。
きれいにオンオフを繰り返していますね。これは想定したとおりの結果です。
オシロスコープでの計測で、周期 6.4μs 、周波数 156KHz になっています。
この周期がどうなるかわからなかったのですが、どうやらオペアンプの応答速度の限界のようです。波形ないですが、コンパレータ部の出力が三角波になっちゃってました。
オペアンプ代用じゃなくて、ちゃんとしたコンパレータを使わなくちゃ、です (^_^;)
ということで、形としては想定通りにできたのだと思いますが、チョッパ周期をどう規定するかなど、実用にするには改善すべき点があります。
以上、訂正でした。